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魔法巫女エデン
 
 
 
 
 
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Episode1:Not 魔法少女 But 魔法巫女!

〜マホウショウジョジャナクテ、マホウミコナノ!〜

 

 一瞬だけ意識を失った後、エデンはハッと目を覚ました。
 気づけば、そこは既にスクールバスの中ではなく、全く見覚えのない奇妙な場所だった。
 まるでスクラップ置き場か何かのように巨大なゴミやガラクタが雑然と積み上げられた向こうに、不思議な形の石組が見える。
「何……あれ……。岩でできた鳥居……?それとも、イギリスのストーンヘンジ……?」
「……もう気がついたのか。さすがはあの人たちの娘だな」
「え……?」
 声のした方へ視線を向けると、傍らには変わらず例の美少年がいた。だが、その姿は先ほどまでの制服姿ではなく、まるで神社にいる神職が身につけるような袴姿に変わっていた。
「あれ……?いつの間に着替えた……んですか?」
 まだ上手く働かない頭で寝ボケたように問うと、すぐに叱責の言葉が飛んできた。
「ばか!今はそんなのん気なことを話している場合じゃない!あれを見ろ!」
 血相を変えた少年が指差す方へ顔を向け……エデンは思わず自分の目を疑った。
「え……?何、アレ……陽炎……?」
 それはエデンが今まで目にしたことのない不可思議な現象だった。その場の景色を歪めながら、まるで透明の炎のように揺らめく“何か”が、一頭の獣の姿を形作っている。
「アレは“災厄の獣”。日本では古来“オニ”と呼ばれ、西洋では“悪魔”と呼ばれてきた……人々に災いをもたらす存在だ」
「え!? 何、ソレ!? ……って言うか、ここはどこ!? 何で私、こんな所にいるんですか!?」
 パニックに陥るエデンに、少年は獣から目を離さぬまま早口に説明する。
「ここはヤツの結界の中。お前はアイツに狙われ、結界の中に引き込まれたんだ。お前の中にはアイツの力の源となる特別な力が眠っているからな」
「特別な……力?何ですか、それ」
「今は長々と説明している余裕がない。とりあえずアレを倒してここを出るぞ。一応訊くが、お前、もう変身はできるのか?」
 さらりと問われ、エデンは一瞬自分が何を言われているのか分からなかった。
「………………は?へ、変身……?」
「……その様子だと、やはり何も教えられていないのか。……コデリ様も相変わらずだな」
 後半はひとり言のようにつぶやき、少年は獣の方を警戒したまま顔だけをエデンの方へ向ける。
「いきなりのことで混乱しているだろうが、こうなった以上はお前に変身してもらうしかない。アイツに勝てるような自分の姿をイメージして、心に浮かぶ“言霊”を唱えるんだ。大丈夫、今のお前にはその力が備わっているはずだ」
「そ、そんなこと言われても……っ、わ、分からないよ……っ、頭の中真っ白で何にも浮かんで来ないよ……っ!」
 エデンが泣きそうな顔でそう叫んだその時、災厄の獣が大きく吠えた。
 次の瞬間、獣の脇に積まれていたガラクタの一つがふわりと宙に浮き、ふたり目がけて凄まじい勢いで飛んで来る。
「危ない……ッ!」
 少年はとっさにエデンの身を抱きかかえ、横に跳んでその攻撃を避ける。
「や……やだ……っ、な、何が……?」
 おそるおそる今までいた場所に目をやると、そこには半分壊れた冷蔵庫が地面をえぐって転がっていた。今さらながら恐ろしさに顔を強張らせ震えだすエデンに、少年は表情と声は厳しいまま、落ち着かせようとでも言うようにゆっくりと言葉をかける。
「大丈夫だ。お前ならできる。お前、小さい頃には散々オモチャのステッキを振り回してゴッコ遊びをしてただろう?あれでいいんだ。あの頃はまだ力が育っていなかったから変身はできなかったが、今ならできる。憧れていただろう?悪を倒す正義のヒロインに」
「え……?何でそんなことまで知って……」
 だが訊き終わる前に獣が再び吠えた。少年は舌打ちし、エデンをかばうように前へ出る。
 ちりん、という音とともに一瞬にして空中に巨大な盾が出現し、飛んで来たガラクタを弾き飛ばして消滅する。
「早く!俺が時間をかせいでいる間に変身するんだ!」
「は……はい……っ」
 エデンはその場にへたり込んだまま、懸命に思考をめぐらす。
(は、早く変身しないとっ、この人が危ない……っ。へ、変身・ヘンシン・メタモルフォーゼ……魔法少女っぽい、キラキラなイメージの“呪文”で……)
 幼い頃に見たアニメの変身シーンを頭の中に思い浮かべながら、エデンは覚悟を決めたように立ち上がり、その“変身呪文”を口にした。
「キャ……キャラメル・キャラメラ・キャラメリゼっ☆」
 思わず決めポーズまでつけて唱えたものの、エデンはすぐに激しく後悔した。
(うぅ……っ、我ながら何の三段活用なんだろう、これ……っ、って言うか、これで変身できなかったら恥ずかし過ぎるんだけど……っ)
 羞恥と不安にいたたまれなくなるような一瞬の間の後、エデンは眩い光に包まれた。
 それまで身につけていた服の感触や重みがふっと消え、身体の周りを光でできた羽根やネコのシッポのようなフワフワしたものが飛び回った……ような気がしたが、あまりに一瞬のことだったので、エデンにははっきりと知覚できなかった。そして気がつけばエデンは花ノ咲理学園の制服とは似ても似つかない衣装を身にまとっていた。
 巫女の緋袴を思わせる幅広のプリーツのついた紅いミニスカート、胸元に三段フリルのついたノースリーブの白い上衣。腕には着物の袖のような広がりを持つアームカバー。腰には白猫のシッポに似たもこもこ素材の帯。えり元には蝶々結びの赤紐がついたフワフワの白いティペット。脚には白いファーと赤い紐飾りのついたオーバーニーソックスと、どことなく草履を彷彿とさせるデザインの厚底サンダル。
 エデンはそんな自分の姿を見下ろし、思わず赤面した。
「何これ、何これっ!何でカラーリングが紅白なのっ!? ハデ過ぎるでしょっ!もっとピンクとかのパステル・カラーが良かったよ……っ」
「……なるほどな。神職の父親と魔女の母親の間に生まれた娘はそうなるってことか。ただの巫女でも魔女でもない。この世界にただ一人の“魔法巫女”ってとこか……」
「え……?私のパパとママが何……?」
 聞き逃せない事実が耳に入り、思わず聞き返そうとしたその時、エデンの目の前に眩しく輝く棒状の光が現れた。
「え?え!? 今度は何っ!?」
「お前の“杖”だ。手に取ってみろ」
「つ、杖って……もしかして、魔法の……?」
 エデンはドキドキしながら光に手を伸ばした。手を触れると、ぼんやりした棒状だった光は独特な形状をした“杖”へと変化していく。
 パールピンクの軸に、柄の部分は短毛種のネコの前肢そのままの形でフワフワの短いファーに覆われ、先端には一対の翼と、中に鈴の吊るされた黄金のハート……に遠目からだと見えるモチーフが現れる。
 一瞬だけ振り向いてその杖の形状を確認した少年は、その途端、何とも言えないビミョウな表情になった。
「うっわぁああぁ……カ、カワイイ……っ。コドモの頃誕生日に買ってもらったマジカル・エンジェル・プリンセスのローズ・クリスタル・ロッドより断然ジュエリーっぽい!プラスチックっぽさが全然無くて高級感が漂ってる……!」
 ひとり興奮するエデンに、少年は視線を獣の方へ向けたまま、ぼそりとツッコミを入れる。
「いや、材質や雰囲気より、フォルムがそもそも微妙過ぎだ。何でただのハートじゃなくてハート型に身をくねらせた黄金のネコなんだよ。明らかに姿勢と体型が不自然過ぎるだろう。おまけに柄がリアル猫脚過ぎてキモチワルイ……」
 そう。エデンの杖の先端部分はただのオープンハートではなく、猫の躯とシッポでハート型を表したものだった。しかも柄の部分は裏側にぷにぷにした肉球(状の飾り)まで付いた本格的猫脚仕様だ。
「えへへ……っ、私の杖、何て名前にしようかなっ。ハートにキャットで……ハートフル・キャット・ロッド……とか?」
「おい、コラっ!のん気にネーミングを考えている場合かっ!」
 エデンが状況をすっかり忘れて杖に夢中になっている間にも獣は攻撃を仕掛けて来る。寸前で攻撃を弾き返した少年に振り返って怒鳴られ、エデンはハッと我に返った。あわてて杖を握りしめ、少年の隣に駆け寄る。
「あの……っ、私、これでどうやって戦えばいいんですか?」
「……今回は俺が力を貸してやる。俺の能力は“具現化”。頭の中のイメージを形にする能力だ。攻撃のイメージを頭に浮かべ、それにふさわしい言霊を紡げ…………と言っても、初心者のお前には難しいだろうな」
 説明を聞きながら既にもう『いっぱいいっぱい』という顔をしているエデンに、少年はため息をついて向き直った。
「仕方がない。特別に俺の記憶を視せてやる。今回はコレを真似すればいいだろう」
 言いながら、少年はエデンの腕を引き寄せ、顔を近づけていく。
「…………えっ?」
 こつん、と額に額が触れる。瞬間、エデンの頭の中にある映像が流れ込んで来た。まるで映画か何かでも見ているようにハッキリ浮かぶその光景の中にいるのは、エデンにとってあまりにも見覚えのある人物で……
「……えっ?パ、パパ……?」
「分かっただろう?今回はとりあえず、慈恩の技を使えばいい。簡単な呪文だから一度で覚えられたな?」
 額を離し、少年が問いかける。だがエデンは混乱してしまってそれどころではない。
「え!? パパもこんな風にアレと戦ってたんですか!? って言うか、呪文って……アレが!?」
「……言いたいことは分かるが、話は後だ。それにお前のセンスも大概親譲りだぞ」
 さりげなくセンスについてけなされた気がしたが、エデンは聞かなかったことにして杖を構える。額を通して視せてもらった父の姿そのままに杖を握った手を前に突き出すと、その拳を少年が後ろから、エデンの背中越しに両手で包み込んだ。
(……あ、何か、あったかい……。このカンジ、すごく懐かしいような……)
 手のぬくもりを通して、身体の中に不思議な力のようなものが流れ込んで来るのが分かる。
「行くぞ!エデン!」
「は、はい……っ!えっと……きなこ・あんころ・さくらもちっ!」
 ただ食べ物の名前を並べているようにしか思えないその“呪文”をエデンが唱えた次の瞬間、杖の先からキラキラ輝く粉末状のものが災厄の獣目がけて飛び出していった。
 それを浴びた途端、獣はまるで目や鼻にきなこ状の粉でも振りかけられたかのように身悶えだす。
 “攻撃”はそれで止まらず、次は小豆大の光の弾丸が次々と獣の身を射抜き、悲鳴を上げて地に倒れ伏した獣を、さらにはさくら色のねっとりした巨大なもち状の物体がサンドして完全に動きを封じ込めた。
 エデンはほっと安堵の息をつくとともに、ひどく複雑な表情になる。
「……『きなこあんころさくらもち』って……パパ……」
「……ネーミングはともかく、威力はなかなかのものだろう。センスについては直そうとして直せるものでもないし、あきらめるしかない。そもそも娘に“エデン”と名付けるような父親なんだからな、あいつは」
 言葉ではけなしながらも、その口調にはどこかあたたかい情のようなものが感じられた。エデンは不思議に思って口を開く。
「あの、あなたはパパとどういう……」
 だが、エデンはその問いを最後まで口にすることができなかった。
 粘つく物体に絡めとられ、激しくもがく獣の悲痛な声が耳に入ったためだ。エデンはハッとして災厄の獣を振り返る。
「大丈夫だ。あいつの動きは封じられている。お前が技を解除しない限り攻撃してくることはない」
「でも……何だかあのコ、かわいそう。苦しそうだし……」
 悲鳴を上げてもがく獣の姿が、エデンにはまるで虐待されている動物のように見えた。自分がそれをしたのだと思うと、ひどく胸が痛む。
「……自分を攻撃してきた相手に対しても、そんな風に思うのか。そういう所も、父親にそっくりだな……」
「え……?」
 少年はエデンの顔をしばらく見つめると、何かをあきらめるように一つ大きなため息をついた。
「お前ならあいつを救うことができる。あいつと契約を交わし、あいつを“災厄の獣”ではなく、魔法巫女に従う“契約の獣”にするんだ。そうすれば、あいつは力有る人間を襲わなくてもお前の力を得て生き延びることができるし、お前はあいつの持つ能力を自分のモノにすることができる」
「そんなことができるの?」
「ああ。この国ではかつて陰陽師やその系譜を受け継ぐ神官たちがオニと呼ばれるモノたちを従わせて己の使鬼神とし、西洋では魔女が悪魔と呼ばれるモノたちと契約を交わし魔力を得てきた。お前はその両方の血を受け継ぐ者。あいつの主となる資質を持っている」
「分かった。やってみる」
 エデンは少年のそばを離れ、ひとり災厄の獣の前に立つ。獣はエデンを目にすると獰猛なうなり声を上げた。エデンはその声に足をすくませながらも、おそるおそる呼びかける。
「あの……ね、ごめんね。ひどいことして。でもね、あんな危ないモノを飛ばして人を攻撃するのはダメなの。分かってくれるよね……?」
 宥めるような、諭すような、攻撃性の全く無いその声に、獣のうなり声は様子をうかがうかのように小さくなる。その様子に安心して、エデンは身を乗り出す。
「あのね、こんな風にして力のある人を襲わなくても、私と契約すれば、あなた、生き延びることができるんだって。だから、仲良くしようよ。だから私の“契約の獣”に……」
 言いながら、エデンはふとその言葉に違和感を覚えた。
(……“契約の、獣”……?それって何か、違う気がする。何だかそれじゃ、契約で仕方なくつき合ってるってだけの冷たい関係みたい……。せっかくなら、もっとフレンドリーでアットホームな関係がいいな。パパと、パパに懐いてたあの動物たちみたいな……)
 悩んだ末、エデンはふっと閃いた。
「あなた、私と契約して、私の“愛犬”になってよ!」
 そのセリフに、背後で少年がその場に崩れ落ちそうになる。だがエデンはまるで気づかず、満足そうな微笑みを浮かべた。
(うん!このコって何だか大型犬っぽくも見えるし、ピッタリ!うち、あんなに広いのにペットが一匹もいなかったもんね。本当は、あのお屋敷に似合いそうなゴールデン・レトリーバーとか飼ってみたかったんだかど、まぁ仕方ないか)
 獣はどこかきょとんとしたようにエデンの微笑みを見つめていたが、やがて「キュウン」と鳴いて「服従します」とでも言うように頭を地に伏せた。
「……どうやら契約を承諾したようだな。エデン、こいつに名を付けてやれ。それで契約は完了する」
「え……っ?名前……?そんな急に言われても……。じゃあ、えっと……“レト”で」
 とっさにゴールデン・レトリーバーから名を取り、エデンは歩み寄ってきた少年を振り返る。
「あの……そう言えば、今さらなんですけど、あなたの名前って……。それに、何者……」
 言いかけ、エデンはふいに訪れた目眩にうずくまった。通学バスからこの“結界”の中に引き込まれた時と同じ、世界が歪み、ぐるぐる回るようなひどい目眩だ。
 少年はエデンの肩に手を触れ、支えるようにしながらそっとささやいた。
「……猫神。俺は“猫神”だ」
 朦朧とする意識の中、エデンは自分が元の制服姿に戻り、スクールバスの中に戻って来たということだけは悟った。だが、それでも目眩は治まらず、身体中がひどく重くて動くことができない。
「え……っ!? その子、どうしたの!?」
 バスに同乗していた女生徒の声が、どこか遠くから響いているように聞こえる。
「どうやら貧血のようです。俺が保健室まで連れて行きます」
 すぐそばから聞こえてくるのは、あの少年の声だ。
(……猫…神……。……猫神…先輩……?)
 目を開けることもできぬまま、エデンは猫神に横抱きに抱え上げられ、連れて行かれる。
(そんな……待って……。こんな、人生初のお姫様抱っこなのに……気を失うなんて、もったいな……)
 そんなことを考えながら、エデンは本格的に意識を失っていった。

 次にエデンが目を覚ました時、そこは見慣れた自分の部屋の天蓋付ベッドの中だった。
 エデンは飛び起きて辺りを見渡した後、はぁーっとため息をつく。
(……何だ、夢か……)
 何だかもったいないような、ガッカリしたような気分で時計に目をやり、エデンはぎょっとする。
「え!? 5時!? 夕方っ!? 私、何で……っ?学校は……っ!?」
 あわててベッドから降り、パジャマ姿のまま廊下に飛び出す。すると、そこには……
「あ……お気がつかれたのですね。我が姫君」
 心からうれしそうな笑顔を浮かべエデンの前にひざまずいたのは、全く見覚えのない若者だった。色素の薄い長めの髪を持ち、どこか高貴な雰囲気を漂わせた、エデンより2〜3才年上に見える少年だ。エデンは戸惑い、とりあえず質問してみる。
「えっ……と、あなたは……ひょっとして、ウチの新しいハウスキーパーさん……ですか?」
「いいえ。俺は貴女の“愛犬”です。今朝貴女のモノにしてくださったではありませんか。覚えておられませんか?“レト”です」
「え、え!? えぇえぇぇえ〜っ!?」
 エデンはパニックに陥り、逃げるように廊下を走り出した。
「え……?ちょっと……お待ちください!姫君っ!」
 後ろから飛んで来る声を振り切るように階段を下り、扉の開いていたダイニング・ルームに飛び込むと、そこにはいつものこの時間ならまだ帰宅していないはずの母親と、三人のハウスキーパーがいた。
「マ、ママっ!どうしよう!ヘンな人がいる!すっごいイケメンなのに、私の愛犬だとか、私のこと姫だとか、わけ分かんないこと言う人が……っ!」
 混乱したまますがりつくように抱きついてくる娘の頭を宥めるように撫で、コーデリアは優しく告げる。
「ヘンな人だなんテ、可哀相でス。あのコはあなたがハジメテ契約を交わした“契約の獣”なのでハ、ありませんカ……?」
「ち、違うもん!あれは夢……って言うか、そもそも私が契約したのは透明な大型犬みたいなコで、人間じゃないし……!」
「アラ、契約の獣は人間の姿にもなれるノですヨ。ココにいるハウスキーパーたちも、皆ママと契約を交わした契約の獣たちなのでス」
 『ホラ』と言ってコーデリアが腕を広げると、そばに控えていたハウスキーパーたちの姿が一瞬にして別のものへと変わる。大きな羽ばたきの音とともに現れたのは……
に、白鳥に……ルリコンゴウインコ……?」
 エデンは呆然と現れた鳥たちの名をつぶやく。三羽の鳥に囲まれて、コーデリアは妖艶に微笑んだ。
(……そう言えば、“夢”の中で猫神先輩がママのこと魔女って……)
 もう目眩は治まったはずなのに、エデンは何だか精神的に目眩を感じた。
「力に目覚めてすぐに契約を成功させルなんテ、サスガは私と慈恩のムスメなのでス!ママはうれしいのでス!」
 はしゃぐコーデリアを前に、エデンは引きつった笑みを浮かべる。
(知らなかった……。できれば知らずにいたかったよ……!ウチが、こんな……フツウじゃない家だなんて……!)
 自分の家庭がよそと比べてちょっと違うということに、人間は意外と気づかない。
 だがエデンの場合、「そもそもこんな特殊過ぎる事情、思いつくわけないじゃない!」と言い訳できなくもない。
 エデンの“日常”は、こうして中学入学3日目にして崩れ去った。
 そうして始まった特殊過ぎる“非日常”に彼女が適応できるようになるまでには、まだまだ時間を要することになるのである……。

episode1-end

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初回アップロード日:2016年8月13日 
 
 
 
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このページは津籠 睦月によるオリジナル・ファンタジー小説の本文ページです。
構成要素は恋愛(ラブコメ)・青春・魔法・アクションなどです。
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