魔法巫女エデン

 
Episode2:My 愛犬 is like a 王子様<3>

〜ワタシノワンコ、マルデオウジサマ〜

 ぐったりした気分でダイニング・ルームの(とびら)()けると、そこには、いつもならいるはずの母の姿(すがた)がなかった。
 
「……あれ?ママは……?」
 
今朝(けさ)早くに出勤(しゅっきん)なさいましたよ。やり残した仕事をどうしても今日中(きょうじゅう)片付(かたづ)けなければいけない、とのことで。昨日(きのう)はエデンお嬢様(じょうさま)覚醒(かくせい)の知らせを受けて会社を早退(そうたい)なさっていましたので」
 
 屋敷(やしき)のハウスキーパーであるマイカがエデンの朝食を用意しつつ、柔和(にゅうわ)笑顔(えがお)説明(せつめい)する。
 
「……そうなんですか」
 
 レトの引いたイスに恐縮(きょうしゅく)しながら(すわ)り、エデンは朝食を(はじ)める。だが食事(しょくじ)をとりながらも、つい気になって目の前のマイカをチラチラと見てしまう。
 
(この人も“契約の獣(エンゲージド・ビースト)”なんだよね。しかも白鳥(はくちょう)変身(へんしん)できる……)
 
 エデンの視線(しせん)に気づいたのか、マイカはエデンの食べ()わった(さら)を片付けながらくすりと(わら)った。
 
「私のことが(めずら)しいのですか?エデンお嬢様(じょうさま)
 
「え……っ、いえ、その…………はい。正直(しょうじき)言うと、(なん)だか気になります。だって、昨日(きのう)まではただのイケメ……あっ、いえ汗フツウの人間(にんげん)”だと思ってたのに、その正体(しょうたい)があんなにフワッフワな鳥さんだったなんて……っ」
 
 昨日のマイカたちの姿(すがた)を思い出し、アニマル好きのエデンの(かお)自然(しぜん)とゆるむ。
 
「……正体が鳥だったというわけではなく、あれはこの世界(せかい)での実体(じったい)を持つにあたり、見た目を鳥に()せて擬態(ぎたい)しているだけなのですが……。それにしても、聞きしに(まさ)るアニマル好きなのですね。それならばレトともきっとすぐに仲良(なかよ)くなれますね」
 
「え……?それってどういう……」
 
 ()きかけて、エデンはハッと(ひらめ)いた。
 
「もしかして、レト……さんも、あんな(ふう)に“アニマル()”できるんですか!?結界(けっかい)の中で見た、あの透明(とうめい)(けもの)の姿じゃなくて……!」
 
「あ……ええ……はい。アレはまだ姫君(ひめぎみ)契約(エンゲージ)(むす)ぶ前の、実体を持たない状態(じょうたい)の姿でしたから……。今は姫君のおっしゃるように“アニマル化”することもできます」
 
 ()()り出すエデンとは正反対(せいはんたい)に、レトはあまり乗り気ではなさそうだ。
 
「……見たいなぁレトのアニマル姿(すがた)
 
 (あるじ)から上目遣(うわめづか)いに(うった)えられ、レトは(こま)ったように硬直(こうちょく)した後、しぶしぶというように目を()じた。
 
 次の瞬間(しゅんかん)、それまでエデンの目の前にあった“レト”の姿が、手品(マジック)消失(しょうしつ)トリックのようにかき()える。ワクワクしながらエデンが視線を()とすと、そこには……
 
「うわっ、うわっ、うっわぁああぁあ〜……赤面だぁ……。(なん)で?何でこの姿なの……?」
 
 これまでテレビや写真(しゃしん)近所(きんじょ)の人が散歩(さんぽ)させているところなどは見たことがあっても、これほど間近(まぢか)実物(じつぶつ)を見たことはなかった優雅(ゆうが)大型犬(おおがたけん)の姿に、エデンは興奮(こうふん)(かく)せない。
 
「……“契約の獣(エンゲージド・ビースト)”の外見(がいけん)は、契約時(けいやくじ)(マスター)(むね)(いだ)いたイメージの影響(えいきょう)()けるのですよ。貴女(あなた)はこういう姿の“愛犬(あいけん)”を(のぞ)んでいらっしゃったのでしょう?」
 
「うん!うん!そうなんだぁ……。(ゆめ)だったんだよね、ゴールデンを()うの。ねぇ、あの……モフモフってしても、いい?ギュ〜って()きついてもいい?」
 
 それまでとは(あき)らかに態度(たいど)(ちが)エデンに、レトはひどく複雑(ふくざつ)そうな表情(ひょうじょう)()かべる。その様子(ようす)を見かねたのか、マイカが苦笑混(くしょうま)じりに(たす)(ぶね)を出してくる。
 
「エデンお嬢様(じょうさま)、ソレは本物のゴールデン・レトリーバーではなく、あくまでゴールデン・レトリーバーに擬態(ぎたい)したレトですから。本物の犬に(たい)するようなスキンシップの仕方(しかた)は、ちょっといろいろと問題(もんだい)があるかと……」
 
 ずっと(あこが)れていた犬を前に(われ)(わす)れていたエデンは、その言葉(ことば)にハッとしたように一瞬(いっしゅん)で顔を()()()める。
 
「あ、そ、そうだよね……っ赤面汗今は可愛(かわい)いゴールデンでも、さっきまでは人間(にんげん)の姿だったんだもんね……っ。気安(きやす)くモフモフしたり、()きついたりしちゃダメだよね……っ汗
 
 ()じらい、しょんぼりと下を()くエデンに、レトは一瞬(いっしゅん)で人の姿に(もど)り、そっとその指先を(にぎ)った。
 
「いえ……その……()れていただくこと自体(じたい)はうれしいのですが……赤面(おれ)貴女(あなた)愛玩(あいがん)されるペットではなく、貴女(あなた)を守り、(とも)(たたか)える存在(そんざい)でありたいのですよ。貴女(あなた)の身は、これからも“災厄の獣(カラミタス・ビースト)”に(ねら)われ続けることでしょう。俺はそんな貴女(あなた)の“力”になるべく、貴女と(ちぎ)りを()わしたのです」

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  このページは津籠 睦月によるラブコメ・ファンタジー小説 「魔法の操獣巫女(マジカル・ビーストテイム・シャーマン)★エデン」の
シンプル・レイアウト(デコレーション・モードLV2)版です。
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シンプル・レイアウト版は用語解説フレーム版より後に制作しているため、ストーリーが若干遅れています。
 
 
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