魔法巫女エデン

 
Episode2:My 愛犬 is like a 王子様
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〜ワタシノワンコ、マルデオウジサマ〜

「おはようございます。我が姫君 
 エデンの(なや)みの元凶(げんきょう)である“レト”が中世の騎士か何かのように(うやうや)しくひざまずいてエデンを()(かま)えていた。
 エデンはそのまま部屋の中に引き返したい衝動(しょうどう)()られながらも、何とかぎこちない()みを()かべて挨拶(あいさつ)する。
「お、おはよう……ございます、レトさん……冷や汗。あの……まさかとは思いますけど、ずっとここでそうしてたわけじゃ、ないですよね……?」
「いいえ。そうしたいのは山々でしたが、先輩方(せんぱいがた)に『それはキモがられるからやめた(ほう)がいい』とご教示(アドバイス)いただきまして……。ですので、ここにいたのはほんの一時間ほど前からです。その……一分でも一秒(いちびょう)でも早く姫君にお目にかかりたかったものですから……赤面
 ほんのり()れたような(かお)でそう言われても、エデンには戸惑(とまど)いしかなかった。
「“先輩方(せんぱいがた)”って、アンバーさん(たち)のことですか?」
 ダイニング・ルームへ向け歩き出しながら、エデンはとりあえず疑問(ぎもん)に思ったことを()いてみる。
「はい。先輩方には契約の獣(エンゲージド・ビースト)としての心構(こころがま)えなど、様々(さまざま)なことを(おし)えていただきました」
 エデンの質問(しつもん)(こた)えながら、レトは階段(かいだん)の所でさりげなく手を()()エデンをエスコートしようとする。エデンは一瞬(いっしゅん)ためらいながらも、拒絶(きょぜつ)するのも(わる)い気がして結局(けっきょく)その手に手を(かさ)ねた。
(うぅ……っ、()ずかしいよ……っ赤面汗王子様みたいな男の人って、実際(じっさい)身近(みぢか)にいると、どういうリアクションしたらいいのか()からないよ……っ汗
「あの……姫君。(おれ)に対して敬語(けいご)を使うのはやめてください。『さん』付けも()りません。俺は貴女(あなた)の“愛犬(イヌ)なのですから」
「そういうわけにはいかな……いきませんよ……っ。愛犬(ワンコ)っていうのも、あの時あなたがワンコみたいな姿(すがた)だったから、つい言っちゃっただけだし……っ汗。それに、それを言うならあなたも“姫君”って()んだりとか、こういうお姫様扱いみたいなのとか、敬語とか、やめてもらえませんか?」
 それはエデンにとって精一杯(せいいっぱい)抵抗(ていこう)だった。だが、レトはきょとんとした顔でエデンを見つめた後、どこか(ふく)みのあるような優雅(ゆうが)微笑(ほほえ)みを()かべ口を(ひら)く。
貴女(あなた)は俺が忠誠(ちゅうせい)(ちか)う“”。そんな貴女(あなた)()が姫として(せっ)することの、何がいけないのですか?それに、これは俺が無理(むり)をして、イヤイヤしているようなことではなく、()きでやっていることです。それでも敬語をやめろとおっしゃるなら、俺はイヤイヤ、無理をして貴女に“タメ(ぐち)”をきくことになるのですが……お(やさ)しい我が姫はそのようなご無理を()いたりはなさいませんよね?」
「う……っ、そ、それは汗……えっと……汗……はい」
 笑顔(えがお)()し切られ、エデンは何かに敗北(はいぼく)したような気分でうなずいた。
(うぅ……っ、何だかこのヒトのペースに()()まれちゃってる気がするよ……。()けちゃいそう……冷や汗

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Episode2−110
 
 
  このページは津籠 睦月によるラブコメ・ファンタジー小説 「魔法の操獣巫女(マジカル・ビーストテイム・シャーマン)★エデン」の
シンプル・レイアウト(デコレーション・モードLV2)版です。
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シンプル・レイアウト版は用語解説フレーム版より後に制作しているため、ストーリーが若干遅れています。
 
 
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