魔法巫女エデン

 
Episode2:My 愛犬 is like a 王子様<7>

〜ワタシノワンコ、マルデオウジサマ〜

「……(こま)ったね冷や汗。“一撃(いちげき)”入れないと特訓(とっくん)は終わらないんだよね……冷や汗。ねぇレト、あなたの力であの(いばら)を引っこ()いて攻撃(こうげき)に使えないかな?」
 
「……分かりませんが、(ため)してみるしかなさそうですね。では、姫君(ひめぎみ)……」
 
 レトは(こわ)れ物でも(あつか)うかのようにそっとエデンを地面に()ろし、(あらた)めてその手を(にぎ)
 
 エデンは昨日(きのう)猫神(ねこがみ)の力を()りて戦った時のことを思い出しながらも、(むね)ドキドキ()えかねて思わず質問(しつもん)していた。
 
「て、手は、(にぎ)らなきゃダメなの……?赤面汗
 
 レトは一瞬(いっしゅん)沈黙(ちんもく)した後、有無(うむ)を言わせぬような極上(ごくじょう)笑顔(えがお)でうなずいた。
 
「ハイ!手はしっかりと(にぎ)っていないとダメなのです
 
「う、ウソでしょ!さっきの()、ゼッタイ何かあるでしょ!赤面汗
 
「ほら姫君、集中しないと(わざ)が出せませんよ。目の前の(いばら)によ〜く焦点(しょうてん)を合わせて、茨の動くところを頭の中でイメージしながら言霊(ことだま)(つむ)ぐんです」
 
 レトは疑問(ぎもん)・質問は一切(いっさい)受け付けませんとばかりに、さっさと話題(わだい)を切り()える。
 
 人生経験(じんせいけいけん)(あさ)いエデンには、その鉄壁(てっぺき)の笑顔(くず)せる自信がまるで()かった。
 
(……もう、今はいいや、後でマイカさんあたりにでも()いて真相(しんそう)(たし)かめておこう)
 
 気持ちを切り()え、エデンは(いばら)の一つを見すえ、意識(いしき)を集中させ始める。
 
「ん〜……えっと……“動け〜、いばら”っ」
 
 “(ひら)けゴマ”のようなノリで“呪文(じゅもん)”を(とな)え、(つえ)()る。するとエデンの視線(しせん)の先の(いばら)が、まるで映画『十戒(じっかい)』の海が()れるシーンのようにワサワサと大きく左右に割れた
 
「あの……姫君(ひめぎみ)、何か(ちが)うイメージを頭に()かべていませんか?(いばら)を引っこ()きたかったのでは……?」
 
 レトがおそるおそる質問(しつもん)してくる。
 
「言わないでよ……っ汗。自分でも失敗(しっぱい)したって分かってるもん汗
 
 言いながらエデンは(ふたた)意識(いしき)を集中させる。だが……
 
「……ダメだぁっ。(ぜん)(ぜん)、引っこ()けないよっ汗。やっぱり地面にしっかり()っこ()ってるからダメなのかなぁ……?」
 
「……そうですね」
 
 レトが心なしか、しょんぼりしたような顔で(にぎ)っていたエデンの手を(はな)す。
 
(……猫神(ねこがみ)先輩(せんぱい)の時はあんなにあっさり(わざ)が出たのに。……アレ?そう言えば、さっきレトと手をつないだ時、猫神(ねこがみ)先輩(せんぱい)の時みたいなあったかさ、感じなかったな。猫神先輩の時が()れたてほかほかのミルクティーミルクティー なら、レトのはソレを(さむ)部屋(へや)の中にしばらく放置(ほうち)してぬるくなっちゃった冷めたミルクティー、みたいな感じだったなぁ……)
 
 ぼんやりとそんなことを(かんが)えるエデンの視界(しかい)に、その時ちらっと緑色(みどりいろ)何か(うつ)る。
 
「……アレ?あそこの(いわ)……あんなに緑色だったっけ?」
 
 見ると、エデンとレトのいる岩盤地帯(がんばんちたい)(はし)が、うっすらと緑がかってきている。
 
 その“緑”は、そうして見ている(あいだ)にもどんどんその()さを()し、じわじわとその範囲(はんい)を広げて来る。エデンはぎょっとして、(ふたた)無意識(むいしき)にレトの服の(はし)(にぎ)っていた。
 
「な……何、あれ……っ汗
 
「あれは“(コケ)”です。苔も植物の一種(いっしゅ)。アンバー先輩(せんぱい)仕業(しわざ)でしょう。……でも、(コケ)で一体何をするつもりなんでしょうか?」
 
 レトは『どうにも分からない』という表情(ひょうじょう)で首をひねる。
 (コケ)はその間にもあり()ない速度(スピード)増殖(ぞうしょく)し、その(あつ)みを()していく。
 
 やがてその(コケ)の間から、ひょろ、と何かの植物の芽が顔を出した。その芽は苔と同じく(すさ)まじい速さで生長(せいちょう)し、一本の“木”になっていく。
 
 レトはハッとして、エデンの(かた)を守るように()()せた。
 
「分かりました!あの(コケ)は“土台(どだい)”です!(やわ)らかな苔を土の()わりとして、この岩盤地帯(がんばんちたい)に“木”を()やすつもりなんです!この場所(ばしょ)は、もはや安全ではありません!」

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Episode2−110
 
  このページは津籠 睦月によるラブコメ・ファンタジー小説 「魔法の操獣巫女(マジカル・ビーストテイム・シャーマン)★エデン」の
シンプル・レイアウト(デコレーション・モードLV2)版です。
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シンプル・レイアウト版は用語解説フレーム版より後に制作しているため、ストーリーが若干遅れています。
 
 
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