魔法巫女エデン

 
Episode2:My 愛犬 is like a 王子様<4>

〜ワタシノワンコ、マルデオウジサマ〜

「私の“力”になるって……もしかして、昨日(きのう)猫神(ねこがみ)先輩(せんぱい)みたいに……?」
 エデンの脳裏(のうり)に昨日の戦闘(せんとう)シーンが()かぶ。
 エデンの口から猫神の名が出た途端(とたん)、レトは不機嫌(ふきげん)そうに顔をしかめた。
「あんなノラネコと俺を一緒(いっしょ)にしないでいただきたいのですが……。まぁ、原理は()たようなものですね。俺の持つ能力を貴女(あなた)にお使いいただくわけです。俺の能力は“念動(ねんどう)”。目に(うつ)範囲(はんい)存在(そんざい)する、ある程度(ていど)までの大きさ・重さの物体(ぶったい)を、意思(いし)の力だけで自在(じざい)に動かせます」
「ああ!そう言えば、昨日の攻撃(こうげき)ってそうだったもんね!」
 エデンが明るく言うと、レトは気まずげに口元を引きつらせる。
「あの……その(せつ)は、本当に(もう)(わけ)ありませんでした冷や汗
「いいよ。気にしてないよ。それより、ある程度って、どの程度?昨日の攻撃で投げてきたのと同じくらい?」
「それは、貴女(あなた)と俺次第(しだい)ですね。契約の獣(エンゲージド・ビースト)の能力は、災厄の獣(カラミタス・ビースト)だった時とは(ちが)い、貴女ご自身の御力(おちから)と、貴女と俺の“(きずな)の力”の強さにより左右(さゆう)されますから」
「え……っ?それじゃ、実際(じっさい)やってみるまで分からないってこと?ぶっつけ本番なの!?」
 かなり意図的(いとてき)強調(きょうちょう)した(きずな)の力”という部分を見事(みごと)(スルー)され、レトはひそかにショックを受ける
 そんなレトに()わり、マイカがしばらくの沈黙(ちんもく)の後、ある提案(ていあん)を出してきた。
「それなら、これから特訓(とっくん)をなさってみてはいかがですか?」
!?
 エデンとレトの声がキレイに重な(ハモ)る。
「はい。(さいわ)当家(とうけ)には特訓の相手に(てき)した契約の獣(エンゲージド・ビースト)幾人(いくにん)もおりますし。……と言うわけですので、アンバー。エデンお嬢様(じょうさま)とレトのお相手を(たの)めますか?」 
「……って、お前がやるのではないのか!」
 厨房(ちゅうぼう)へ続くドアが(いきお)いよく(ひら)き、(たか)という別の姿(すがた)を持つコーデリアの契約の獣(エンゲージド・ビースト)・アンバーが飛び出して来る。
「……アンバーさん……?」
「アンバー先輩(せんぱい)……ひょっとして、(ぬす)()……冷や汗
 エデンとレトの唖然(あぜん)とした表情に、アンバーは決まり悪そうに咳払(せきばら)いをする。
(ちが)います。たまたま隣室(りんしつ)作業(さぎょう)をしていたところ、会話が聞こえてきたものですから……。その……この屋敷(やしき)のハウスキーパー・チームのチーフとして、少々気にかけさせていただいただけです」
「アンバーはこう見えてもウチで一番面倒見(めんどうみ)が良いですから。エデンお嬢様(じょうさま)のこともレトのことも、かなり気にかけてハラハラしているんですよ」
「そう……なんですか……?」
 エデンはやや(うたが)わしげに、イケメンだが眼光(がんこう)(するど)強面(コワモテ)印象(いんしょう)のあるアンバーの顔を見つめる。アンバーは不機嫌(ふきげん)そうにマイカをにらみつけた。
余計(よけい)なことを言うな。それより特訓(とっくん)の相手を俺に、と言ったが、そういうことは言いだしっぺのお前がやるべきではないのか?」
「……私の能力ではレトにとって相性(あいしょう)が良くないでしょうから」
「俺だって、適役(てきやく)とは言い(がた)いぞ」
 口では文句(もんく)を言いながらも、アンバーは背広(せびろ)()ぎ、(うで)まくりをして特訓の準備(じゅんび)らしきものを始めている。
「……まぁ、ろくに実践(じっせん)も無いまま本番では、エデン様の身に危険(きけん)(およ)びかねんからな。……では、僭越(せんえつ)ながら私がお相手をさせていただきます。私の能力は“植物(しょくぶつ)操作(そうさ)”。今回エデン様には私の()り出す攻撃(こうげき)()けていただき、私に一撃(いちげき)でも入れられたら特訓終了(しゅうりょう)、ということにいたしましょう」
 言うなりアンバーは(たか)へと姿を変え、くちばしを(ひら)いてピルルルルッと甲高(かんだか)い鳴き声を上げた。レトがハッとしてエデンの(かた)に手を()く。
「え……っ赤面汗、な、何……っ!?汗
「アンバー先輩(せんぱい)結界(けっかい)(ひら)きます。俺から(はな)れないでください」
 レトがいい終わるより早く、昨日(きのう)レトの結界に引き込まれた時と同じ、世界が(ゆが)み、回るような感覚(かんかく)がエデンを(おそ)う。エデンは思わず、すがりつくようにレトの服の(はし)をつかんだ。

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Episode2−110
 
  このページは津籠 睦月によるラブコメ・ファンタジー小説 「魔法の操獣巫女(マジカル・ビーストテイム・シャーマン)★エデン」の
シンプル・レイアウト(デコレーション・モードLV2)版です。
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シンプル・レイアウト版は用語解説フレーム版より後に制作しているため、ストーリーが若干遅れています。
 
 
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