魔法巫女エデン

Episode1:Not 魔法少女 But 魔法巫女!<8>

〜マホウショウジョジャナクテ、マホウミコナノ!〜

 次にエデンが目を()ました時、そこは見慣(みな)れた自分の部屋の天蓋(てんがい)(つき)ベッドの中だった。
 エデンは飛び起きて辺りを見渡(みわた)した後、はぁーっとため息ため息をつく。
(……何だ、夢か……)
 何だかもったいないような、ガッカリため息したような気分で時計に目をやり、エデンはぎょっとする。
「え!? 5時!? 夕方っ!? 私、何で……っ?学校は……っ!?」
 あわててベッドから()り、パジャマ姿(すがた)のまま廊下(ろうか)に飛び出す。すると、そこには……
「あ……お気がつかれたのですね。我が姫君
 心からうれしそうな笑顔(えがお)()かべエデンの前にひざまずいたのは、全く見覚(みおぼ)えのない若者だった。色素(しきそ)(うす)い長めの(かみ)を持ち、どこか高貴な雰囲気(ただよ)わせた、エデンより2〜3才年上に見える少年だ。エデンは戸惑(とまど)い、とりあえず質問してみる。
「えっ……と、あなたは……ひょっとして、ウチの新しいハウスキーパーさん……ですか?」
「いいえ。俺は貴女(あなた)の“愛犬(イヌ)わんこラブ”です。今朝(けさ)貴女のモノにしてくださったではありませんか。(おぼ)えておられませんか?“レト”です」
「え、え!?
 エデンはパニックに(おちい)り、()げるように廊下(ろうか)を走り出した。
「え……?ちょっと……汗()ちください!姫君っ!」
 後ろから飛んで来る声を()り切るように階段を()り、(とびら)の開いていたダイニング・ルームに飛び()むと、そこにはいつものこの時間ならまだ帰宅(きたく)していないはずの母親と、三人のハウスキーパーがいた。
「マ、ママっ!どうしよう!汗 ヘンな人がいる!すっごいイケメンなのに、私の愛犬(イヌ)だとか、私のこと姫だとか、わけ分かんないこと言う人が……っ!汗
 混乱(こんらん)したまますがりつくように()きついてくる(むすめ)の頭を(なだ)めるように()で、コーデリアは優しく()げる。
「ヘンな人だなんテ、可哀相(かわいそう)でス。あのコはあなたがハジメテ契約(けいやく)()わした“契約の獣(エンゲージド・ビースト)”なのでハ、ありませんカ……?」
「ち、(ちが)うもん!あれは夢……って言うか、そもそも私が契約したのは透明な大型犬みたいなコで、人間じゃないし……!」
「アラ、契約の獣(エンゲージド・ビースト)は人間の姿(すがた)にもなれるノですヨ。ココにいるハウスキーパーたちも、(みんな)ママと契約(けいやく)()わした契約の獣(エンゲージド・ビースト)たちなのでス」
 『ホラ』と言ってコーデリアが(うで)を広げると、そばに(ひか)えていたハウスキーパーたちの姿が一瞬(いっしゅん)にして別のものへと変わる。大きな()ばたきの音とともに(あらわ)れたのは……
(たか)に、白鳥(はくちょう)に……ルリコンゴウインコ……?」
 エデンは呆然(ぼうぜん)と現れた鳥 たちの名をつぶやく。三羽の鳥に囲まれて、コーデリアは妖艶(ようえん)微笑(ほほえ)んだ。
(……そう言えば、“夢”の中で猫神先輩(ねこがみせんぱい)がママのこと魔女(まじょ)って……冷や汗
 もう目眩(めまい)(おさ)まったはずなのに、エデンは何だか精神的(せいしんてき)目眩(めまい)を感じた。
「力に目覚(めざ)めてすぐに契約(けいやく)成功(せいこう)させルなんテ、サスガは私と慈恩(ジョン)のムスメなのでス!ママはのでス!」
 はしゃぐコーデリアを前に、エデンは引きつった()みを()かべる。
(知らなかった……。できれば知らずにいたかったよ……!ウチが、こんな……フツウじゃない家だなんて……!冷や汗
 
 自分の家庭(いえ)がよそと(くら)べてちょっと(ちが)ということに、人間(ひと)は意外と気づかない。
 だがエデンの場合、そもそもこんな特殊(とくしゅ)()ぎる事情(じじょう)、思いつくわけないじゃない!と言い(わけ)できなくもない。
 エデンの“日常(にちじょう)”は、こうして中学入学3日目にして(くず)()った。
 そうして始まった特殊(とくしゅ)()ぎる“非日常(ひにちじょう)に彼女が適応(てきおう)できるようになるまでには、まだまだ時間を(よう)することになるのである……。

episode1-end
 
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Episode1−1
 
  
このページは津籠 睦月によるラブコメ・ファンタジー小説  
魔法の操獣巫女(マジカル・ビーストテイム・シャーマン)★エデン」の 
シンプル・レイアウト版です。
 
 
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