魔法巫女エデン

Episode1:Not 魔法少女 But 魔法巫女!<5>

〜マホウショウジョジャナクテ、マホウミコナノ!〜

 一瞬(いっしゅん)だけ意識(いしき)(うしな)った後、エデンはハッハッと と目を()ました。
 
 気づけば、そこは(すで)にスクールバスの中ではなく、全く見覚(みおぼ)えのない奇妙(きみょう)な場所だった。
 まるでスクラップ置き場か何かのように巨大なゴミやガラクタが雑然(ざつぜん)()み上げられた向こうに、不思議(ふしぎ)な形の石組(いしぐみ)が見える。
 
「何……あれ……。岩でできた鳥居(とりい)鳥居……?それとも、イギリスのストーンヘンジ……?」
 
「……もう気がついたのか。さすがはあの人たち(むすめ)だな」
「え……?」
 
 声のした方へ視線を向けると、(かたわ)らには変わらず例の美少年がいた。だが、その姿は先ほどまでの制服姿ではなく、まるで神社(じんじゃ)にいる神職(しんしょく)が身につけるような袴姿(はかますがた)に変わっていた。
 
「あれ……?いつの()着替(きが)えた……んですか?」
 
 まだ上手(うま)(はたら)かない頭で()ボケたように()うと、すぐに叱責(しっせき)の言葉が飛んできた。
 
「ばか!今はそんなのん気なことを話している場合じゃない!あれを見ろ!」
 
 血相(けっそう)を変えた少年が指差(ゆびさ)す方へ顔を向け……エデンは思わず自分の目を(うたが)った。
 
「え……?何、アレ……陽炎(かげろう)……?」
 
 それはエデンが今まで目にしたことのない不可思議(ふかしぎ)現象(げんしょう)だった。その場の景色(けしき)(ゆが)めながら、まるで透明(とうめい)(ほのお)のように()らめく“何か”が、一頭の(けもの)姿(すがた)を形作っている。
 
「アレは“災厄の獣(カラミタス・ビースト)”。日本では古来(こらい)オニ”と()ばれ、西洋では“悪魔(あくま)”と呼ばれてきた……人々に災いをもたらす存在(モノ)だ」
 
「え!? 何、ソレ!? ……って言うか、ここはどこ!? (なん)で私、こんな所にいるんですか!?」
 
 パニックに(おちい)るエデンに、少年は(けもの)から目を(はな)さぬまま早口に説明する。
 
「ここはヤツの結界の中。お前はアイツに(ねら)われ、結界の中に引き()まれたんだ。お前の中にはアイツの力の(みなもと)となる特別な力(ねむ)っているからな」
 
「特別な……力?何ですか、それ」
「今は長々と説明している余裕(よゆう)がない。とりあえずアレを(たお)してここを出るぞ。一応(いちおう)()くが、お前、もう変身はできるのか?」
 
 さらりと()われ、エデンは一瞬(いっしゅん)自分が何を言われているのか分からなかった。
 
「………………は?へ、変身……?」
 
「……その様子(ようす)だと、やはり何も(おし)えられていないのか。……コデリ様も相変(あいか)わらずだな」
 
 後半はひとり(ごと)のようにつぶやき、少年は(けもの)の方を警戒(けいかい)したまま顔だけをエデンの方へ向ける。
 
「いきなりのことで混乱(こんらん)しているだろうが、こうなった以上はお前に変身してもらうしかない。アイツに()てるような自分の姿(すがた)をイメージして、心に()かぶ“言霊(ことだま)”を(とな)えるんだ。大丈夫(だいじょうぶ)、今のお前にはその力が(そな)わっているはずだ」
 
「そ、そんなこと言われても……っ、わ、分からないよ……っ汗、頭の中真っ白で(なん)にも()かんで来ないよ……っ!」
 
 エデンが泣きそうな顔でそう(さけ)んだその時、災厄の獣(カラミタス・ビースト)が大きく()えた。
 次の瞬間(しゅんかん)、獣の(わき)()まれていたガラクタの一つがふわりと(ちゅう)に浮き、ふたり目がけて(すさ)まじい(いきお)いで飛んで来る。
 
(あぶ)ない……ッ!
 
 少年はとっさにエデンの身を()きかかえ、横に()んでその攻撃(こうげき)()ける。
 
「や……やだ……っ青ざめ汗、な、何が……?」
 
 おそるおそる今までいた場所に目をやると、そこには半分(こわ)れた冷蔵庫(れいぞうこ)が地面をえぐって(ころ)がっていた。今さらながら(おそ)ろしさに顔を強張(こわば)らせ震えだすエデンに、少年は表情と声は(きび)しいまま、落ち()かせようとでも言うようにゆっくりと言葉をかける。
 
大丈夫(だいじょうぶ)だ。お前ならできる。お前、小さい(ころ)には散々(さんざん)オモチャのステッキを()り回してゴッコ(あそ)びをしてただろう?あれでいいんだ。あの頃はまだ力が(そだ)っていなかったから変身はできなかったが、今ならできる。(あこが)れていただろう?悪を(たお)正義(せいぎ)のヒロインに」
「え……?何でそんなことまで知って……」
 
 だが()き終わる前に獣が(ふたた)()えた。少年は舌打(したう)ちし、エデンをかばうように前へ出る。

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Episode1−1
 
  
このページは津籠 睦月によるラブコメ・ファンタジー小説  
魔法の操獣巫女(マジカル・ビーストテイム・シャーマン)★エデン」の 
シンプル・レイアウト版です。
 
 
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