第九章 土の下の女神 |
「ここを出た
俺の問いに、
「分からない。俺は
やっと答えた泊瀬の口は重く、その顔には不安の色が暗く
「案ずることはありませんよ。できる限り人目につかない野山の道を選んで行けば、きっと
「あぁ、そうだな……」
その時、それまで無言で歩いていた
「どうしたんだ、海石姫」
泊瀬の問いに、海石は
「このまま
淡々と語る海石に、花夜は思わず声を上げた。
「海石姫、
だがそこで花夜は口を
「全ての罪は私が
「何を言い出すんだ、海石姫!そんなこと、できるわけがないだろう!」
「いいえ、
海石は
「私も、
「駄目だ、海石姫!そんなこと、きっと
「……分かっておりますわ。あの
海石の表情は揺らがない。だが、その瞳からは胸の底に秘めていた悲しみが
「夏磯姫は私にとってかけがえのない友人でした。誰よりも清らかで、優しくて……あの
「魂依姫に……就くはずだった巫女……?」
花夜がはっとしたようにその言葉を繰り返す。同時に俺も思い出していた。宮処の
――何でも
戸惑いの表情を浮かべる
「夏磯姫というのは、この国で
「……けれど、その前にあの方はお亡くなりになりました。殺されたのですわ。自らの
「え……」
驚きの表情を浮かべる花夜に、泊瀬はゆるく
「葦立氏が
「いいえ、葦立氏の
「葦立の……巫女姫……」
穏やかならざるものを感じたのか、花夜は
「ええ。私が殺したいほどに憎んでいるのはその葦立の巫女姫なのです。あの姫は元より巫女としてふさわしい
「
「……
花夜が小さく息を
ふいに辺りに奇妙な“音”が響き渡った。まるで水の中で聴く音のように奇妙な
『
「誰だ……ッ!?」
泊瀬が
それは、行く手を
「
花夜が張り
「ああ。しかも
その時、
「その声……
「よせ!
泊瀬が
「……許しませんわ。私から
だが水霊は海石の言葉や怒りの眼差しなど意にも介さず、淡々と一方的な言葉を投げかけてくる。
『
「……俺たちが
泊瀬が
「こうなれば今はこの
俺の言葉に花夜も頷く。
「そうですね。そして
俺は再び
『
それはわずかの迷いも感じさせない、妙に
『我は
「これは……“
それは風でもなければ
「何だ、これは……っ!」
何とかその場に留まろうと足を
「これは、
必死に
「きゃあっ!」
地の上に荒々しく投げ出され、花夜が悲鳴を上げる。
「痛……っ、皆、
その目の先には、
「やはり
相も変わらず何の感情も感じさせないその声の主は、その高き
上衣の上には下の
「
思わず
「あなた様は幼き
「見張りだと!?そんな馬鹿な……。俺たちは
「それは何の
「それでは俺たちの今までの動きは全て
泊瀬の顔から血の
「まさか真に神域を
変わらず
おそらくこれは初めから
「おとなしく
言葉だけは
「……させませんわ。私からこの上、泊瀬様まで
「
直後、海石を中心に
兵士たちは
「これは……海石姫の
水を巻き上げながら吹きつける風から身を
「
嵐をまとったまま、海石は刀子を
「
雲箇は顔色一つ変えず兵士を
「
その手に持つ比礼がふわりと風になびいたかと思うと、次の
海石は立っていられず、悲鳴とともに地に
「自ら
「海石姫!」
泥の中に
「その姿……
言って雲箇はその顔を動かし、俺の姿に目を止めた。
「
「……
「私の問いにはお答えいただけないのですね。神と言えど、
雲箇はわずかの間、頭の中で考えでも
「
「なっ……」
俺はしばし言葉を
「俺に、水神の下に
「いいえ、聞いていただきます」
言いながら雲箇は手の動きだけで
「ヤト様……っ」
花夜が
「花夜!」
ほんのわずかの間でも花夜のそばから
「お分かりになりましたか?我々はあなた様を害することはできずとも、あなた様の巫女を害することはできるのですよ。
雲箇のどこまでも冷たい声が