【ノリト】

物語中に出てくる「祈詞(ノリト)」は、神社などで唱えられている「祝詞(のりと)」がモデルになっています。

「祝詞」の語源には様々な説があり、主な説は以下の通りです。

  • 宣言(のりこと)」から来たとする説
  • 「のりときごと(告説言/宣解言/告解言)」から来たとする説
  • 宣処詞(のりとごと)(=天子が高い処に登って発することば)」の略とする説
  • 祈言(いのりこと)」から来たとする説

そしてお気づきかと思いますが、物語中の「祈詞」の字は上の「祈言」説を元にさせていただいているのです。

【祓の祈詞】

物語中で雲箇が唱える「祓の祈詞」は祝詞の中でもメジャーな、お祓いの際に唱えられる「祓詞(はらえことば)」の要素(エッセンス)を抽出し、アレンジして使わせていただいています。

「祓詞」とは大雑把(おおざっぱ)に説明すると、「お祓い」を司る神々に罪や穢れ、災いなどを祓い清めてくださるようお祈りするという詞なのですが、その中には罪や穢れがどんな神様の力により、どういう過程を通って浄化されていくかが事細かに記されていて、読んでいくと結構おもしろいのです。

まず「祓詞」の中に登場する「お祓いを司る神」は「瀬織津比売(せおりつひめ)」「速開都比売(はやあきつひめ)」「気吹戸主(いぶきどぬし)」「速佐須良比売(はやさすらひめ)」という四柱の神々(ちなみに物語中では微妙に漢字表記を変えている神様もいます。)なのですが、罪や穢れは以下の過程でまるでリレーのように神々に順番に引き継がれ、次第に遠く離れて消え去っていくのです。

  1. 瀬織津比売が川の水に流し、海に運ぶ
  2. 海の中にいる速開都比売が「かか呑む(かっかっと音を立てて飲み込む)」
  3. 気吹戸主が「根の国底の国」に吹き飛ばす
  4. 「根の国底の国」にいる速佐須良比売がそれを持ってさすらい、失わせる

知識の無い管理人には2と3の間のつながりがちょっと不明なのですが、とにもかくにも、罪や穢れが世界を巡り巡って様々な神々の手を経てだんだんと浄化されていく過程がなんとも壮大で、物語性を感じさせて、個人的にはとても好きなのです。
特に、罪を浄化するにしても「浄化の神様」などがいて一度にばーっと浄化してくれるわけではなく、様々な神様の分業制で、しかも「川の水に流れていく」だとか「吹き飛ばされる」だとか自然現象と絡めて浄化されていくあたりが、何とも言えず日本らしくてイイなぁ、と個人的に思います。

【拍手の回数】

拍手(かしわで)については皆様もよくご存知かと思います。

現在では神社に参拝する時には「二礼二拍手一礼」が一般的な作法と言われていますが、この作法にも神社によっての違い、また歴史的な変遷などがあり、とある辞書には拍手も古くは四度打つのが正式だったと書かれています。
(ちなみに現代でも出雲大社では「四拍手(しはくしゅ)」、伊勢神宮では「八度拝(はちどはい)八開手(やひらで)(拝を8回と拍手を8回)」が正式な作法のようです。)

ただその「四拍手」について作者があまり詳しくないということと、「二礼二拍手一礼」が一般的に広く普及している現代で「四拍手」を描写すると読者様に違和感を抱かれてしまうのではないかという心配もあり、物語中では拍手は二回にさせていただいています。 

ちなみに「祈詞」と「拍手」の順番は、祝詞奏上の作法を参考にさせていただいています。
(正確には @二拝→A祝詞→B二礼二拍手一拝 という順番になるそうです。)

 
※このページは津籠(つごもり) 睦月(むつき)によるオリジナル・ファンタジー小説花咲く夜に君の名を呼ぶ(古代ファンタジー小説)
  ストーリーや用語に関する豆知識やこぼれ話・制作秘話などを蛇足に解説したものです。
  解説の内容につきましては資料等を参考にしてはいますが、諸説あるものもございますし、
  管理人(←歴史の専門家ではありませんので)の理解・知識が不充分である可能性もありますのでご注意ください
ファンタジー小説解説へびさんのあんよ
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