物語中で雲箇が唱える「祓の祈詞」は祝詞の中でもメジャーな、お祓いの際に唱えられる「祓詞」の要素を抽出し、アレンジして使わせていただいています。
「祓詞」とは大雑把に説明すると、「お祓い」を司る神々に罪や穢れ、災いなどを祓い清めてくださるようお祈りするという詞なのですが、その中には罪や穢れがどんな神様の力により、どういう過程を通って浄化されていくかが事細かに記されていて、読んでいくと結構おもしろいのです。
まず「祓詞」の中に登場する「お祓いを司る神」は「瀬織津比売」「速開都比売」「気吹戸主」「速佐須良比売」という四柱の神々(ちなみに物語中では微妙に漢字表記を変えている神様もいます。)なのですが、罪や穢れは以下の過程でまるでリレーのように神々に順番に引き継がれ、次第に遠く離れて消え去っていくのです。
- 瀬織津比売が川の水に流し、海に運ぶ
- 海の中にいる速開都比売が「かか呑む(かっかっと音を立てて飲み込む)」
- 気吹戸主が「根の国底の国」に吹き飛ばす
- 「根の国底の国」にいる速佐須良比売がそれを持ってさすらい、失わせる
知識の無い管理人には2と3の間のつながりがちょっと不明なのですが、とにもかくにも、罪や穢れが世界を巡り巡って様々な神々の手を経てだんだんと浄化されていく過程がなんとも壮大で、物語性を感じさせて、個人的にはとても好きなのです。
特に、罪を浄化するにしても「浄化の神様」などがいて一度にばーっと浄化してくれるわけではなく、様々な神様の分業制で、しかも「川の水に流れていく」だとか「吹き飛ばされる」だとか自然現象と絡めて浄化されていくあたりが、何とも言えず日本らしくてイイなぁ、と個人的に思います。