第十章 嵐の |
水神の加護を受ける国にふさわしく、
庭園には
池に面した建物には水の上にまで張り出した
だが俺達はその景色を望むことすら叶わなかった。
周りが見えぬほど
「
「
「このようなやり方で私達を死罪に追い込めたとしても、
「葦立の人間だけではありません。今はまだお出ましになっておられませんが……」
雲箇が言い終わらぬうちに、
「……どうやらおいでになったようです」
雲箇は言葉を切り、立ち上がる。その場にいた葦立氏の人間達も皆、一斉に
息を
「皆の者、待たせたな」
そう言って薄く笑った男は、一目で高貴な身分と分かる
その姿に泊瀬と海石は目を
「
「……兄上」
二人の口から漏れ出たその名に、花夜も目を
「泊瀬様の兄君……?
信じ
その姿に
「
「ああ。あれだけ口うるさく言われればさすがに覚えているさ」
雲梯はうんざりしたように顔をしかめる。その二人のやり取りを聞き、
「水の類を持ち込ませない……。つまりは、水を通して外のことを見守っていらっしゃる
「そんな……」
花夜も
「久しいな、
「兄上……、あなたが俺達を
心の内がまるでつかめない
「いや、私は単なるお
顔色を変えぬ……どころか、うっすら笑みさえ浮かべたままで、彼はあっさりと葦立氏の
「
にやにやした笑みを浮かべながらそう言う雲梯に、雲箇は
「あなた
だが周りに居並ぶ葦立の人間たちは、その言葉を鼻で
「……
その
「彼の者は
「ほぅ……。我が国に
言って、雲梯は意味ありげな目で雲箇を見る。
「元は一国の姫で神に
「……さあ。私にお
からかわれているのを知りながら、雲箇はそ知らぬ顔で受け流す。その態度に雲梯もそれ以上何かを言うのを
「花夜姫よ。そなたの言葉は正しいが、それでこの者らの心が
「あなたは泊瀬様の兄君ではないのですか?弟である泊瀬様に対して、御
花夜の必死の問いに、雲梯は再び薄く笑った。だがそれは、それまでの
「私に何を
「兄上……」
これまで思いも
「
それは全てを
「お前たち、これから先この場で起こることを見てはいけないよ。耳も
その雲梯の言葉を合図にしたかのように、
泊瀬と海石はぎゅっと目を
「やめてえぇぇえーっ!」
その
それは
「一体、何が……?」
内から
「ミヅハ……様……?」
泊瀬が信じ
その
「泊瀬!泊瀬!大事無いか?」
「あぁ……血が出ておる。痛かったであろう?
驚きのあまり何も言えずにいる泊瀬の顔をじっと
しばらくそうして
水波女神はほっと
「そんな、まさか、
「鎮守神様は
「我らの
「水神様の御目が届かぬよう、この
「一滴の水も持ち込まぬなど、できるはずがあるまい。
「
「……兄上……?」
皆が
「お初に御目にかかります、我らの愛し
「……
雲梯を見つめる水波女神の
「水を通してこの
その言葉に葦立氏らは再び
「何を
「我らを裏切るおつもりですか、雲梯様!」
「……裏切る?一体何を裏切ると言うのだ?私は元々お前たちに
うっすら笑みを浮かべたまま、雲梯は床に転がる折れた
「
「兄上!?何を……!?」
雲梯は
「鎮守神様は
言いながら雲梯は大刀の
「
その
「……あなた様が
女神の身が
「あ……、あ……あぁ……っ。いかん、このままでは……心が、……
「ミヅハ様!」
泊瀬は女神の頬を
「ミヅハ様!しっかりなさって下さい!
「
「兄上!あなたは一体、何をなさりたいんだ!このままでは荒魂となったミヅハ様に全てを壊されてしまう!この
泊瀬の叫びに、雲梯は笑みを深くする。それは正気の人間のものとは思えぬほどの狂おしき笑みだった。
「……分かっているではないか。私はこの国を壊したいのだ。この国の
その場にいた全ての者が言葉を失う中、女神の
「あぁ……何ということだ……。
女神は両の
「あぁ……
その声はまるで悲鳴のように
直後、床板を
「泊瀬様!」
顔色を変えて
水は
それはやがてただの
波の
「あれは……
花夜の
「いや。あれは