サクラを実際に種から育てるのは、なかなか大変なようです。
接木や挿木でなく種から芽を出して生長することを「実生」と言いますが、サクラの種子は湿った状態で10℃以下の温度に2ヶ月以上さらされないとよく発芽せず、発芽に適した温度は5〜10℃だと言われています。
とは言え、ただ冬を越して春になれば芽吹くというものではなく、バケツいっぱいに実を拾ってきて毎年畑に蒔いてもなかなか芽が出ず、やっと芽生えたのは最初に種を蒔き始めてから七年目のことだった、というケースもあります。
さらに、芽が出たからと言って、そのサクラがそのまま順調に生長してくれるとは限りません。
まず、サクラの樹高を追い越すような高木の生える自然の森の中では、サクラは太陽光を遮られ生長を妨げられてしまいます。
また、台風や雪などの自然災害もサクラの若木にとっては脅威となります。
生長前のまだ細い幹や枝は強風や雪の重みで無惨に折れてしまうのです。
サクラは他の広葉樹に比べ病気や害虫の発生の多い樹木でもあります。
特にサクラの病気については現在までに記録されているだけで47種類あると言われています。
サクラを種から育て、無事に生長させて花を咲かせるまでには大変な年月と手間がかかるのです。
しかし実生のサクラには不思議な生命力があり、阪神大震災と東日本大震災の前年にはいつもと色の違う妙に赤い色の花を咲かせた、などという話もあります。
ちなみに現在日本で最もメジャーな品種である「ソメイヨシノ」は江戸後期に発見された園芸品種ですが、めしべが退化しているため実ができず、種子で殖えることはありません。
挿木や接木などにより同じ木を殖やしていく「クローン桜」なのです。