茨城郡【茨蕀置の杜】   
モデルは常陸国風土記で言うところの『茨城(うばらき)郡』です。
場所は用語解説にもある通り、筑波山の東辺りです。
 
『茨蕀置』の文字は茨城という名の由来の一つとして語られているエピソードから持ってきています。
ちなみにそのエピソードとは、昔、国巣(くず)と呼ばれる土着の先住民が、穴の中に茨蕀(うばら)(トゲの生えた植物)を置いて罠としたものに引っかかり、(とげ)に刺さって死んでしまったというものです。
 
それと、この物語の中では精霊や神の多く()む霊力に満ちた神聖な森を特に『杜』と表記しています。神社の杜と同じイメージです。
 
オリジナル神名【ツキタチアラミタマノカガチヒコ】  
完全にオリジナルの神名であり、実際のヤトノカミにこのような別名はありません。 
 
意味は本編で説明している通り、ツキタチ(=大刀に憑く)アラミタマノ(=荒魂の)カガチ(=蛇)ヒコ(=男神)というもので、伊勢の元々の地方神『ツキサカキイツノミタマノアマサカルムカツヒメ(=常緑樹に依り憑く尊霊の天から離れ津に向かう女神)』という神様の名前を参考にして組み立てています。
 
ちなみに「ツキタチ」という部分は、まだ全ては明かされていないヤトノカミの本性について、ほんのりネタバレとなっています。
 
夜刀神【ヤトノカミ】  
この物語の語り部であり、主神公でもある『ヤトノカミ』は常陸国風土記の行方郡の記述に登場する神です。
ただし、作者によるオリジナル設定がこれでもかというほど入っているため、風土記と共通する箇所は、名前と居住地と、額に角持つ蛇の神という部分(とあともう一つ、ネタバレになるので秘密の部分)だけです。
 
ちなみに、日本の伝承において蛇が人に化ける時は、イケメンか美女になるのがお約束(セオリー)ですので、彼も人の姿の時は容姿端麗かと思われます。
 
notネギ玉【祈魂】   
オリジナル設定です。
この物語の舞台となる『祈形国』は、人間の願い、想いが形となる世界ということになっていますので、その基盤(ベース)となる力というイメージで設定しています。
 
『祈』は『ネギ』とも読みますので、『ネギタマ』でも良かったのですが、それだと個人的にお好み焼きの種類のように思えてお腹が空いてたまらないのでこの読みになりました
  
ネノカタスクニ【祈形国】  
ある意味オリジナル設定です。
 
モデルは日本神話に出てくる『根の堅洲国』で、この国は木の(うろ)から根を通っていく世界ということで、地下にある世界と考えられていたり、黄泉(よみ)の国と同一視されたりもしていますが、この物語の中では、地下世界でも黄泉の国でもなく、人間界(豊葦原瑞穂国)と似て非なる異世界というイメージで描いています。
そして、『()(かた)す国』ということで、祈りの具現化する国、人間の想いが形になる国というイメージを込めて、この漢字の表記にしました。
とは言え、作者がわりと現実主義者なので何もかもが思い通りになる世界というわけではなく、シビアな現実もかなりある世界なのですが、その中でも、人間の切ない祈りや想いが報われるような世界であって欲しいなぁという願いを込めて、こんな名前の世界(クニ)になっています。
  
not鬼道but祈道【祈道】   
オリジナル設定です。
発想の源は『魏志倭人伝』で卑弥呼が使用していたといわれている『鬼道』で、音はそのままに漢字を変えて使っています。
  
巫女のルーツ【古の素朴な祭祀】   
日本の巫女のルーツは、天岩戸伝説で、天照大神の籠もった岩屋の前で踊ったアメノウズメノミコトと言われています。
よって、ここでは『古の祭祀』をそんな原始的な踊りのイメージで描いています。
ただし、古事記オリジナルにあるような官能的な雰囲気は抑え、 決まった型の無い、本能のままに踊る踊りというイメージで描いています。
 
木花サクヤヒメの姉妹神【コノハナチルヒメ】   
コノハナサクヤヒメの姉妹神とも、同一神とも言われる女神で、古事記等では名前しか出てきません。
字面から、木の花の散る様を司る女神と思われますが、詳細は全く分かりません。
 
日本神話には、このような、名前だけ出てきて実態のよく分からない神様が山ほどいます。そして津籠はそんな、あまりメジャーでない神様を掘り起こすのが大好きだったりします。
  
陰陽道を参考に【水の霊力を削ぐには土】   
ここでは、陰陽五行思想の『土剋水(どこくすい)』の考えを参考にしています。
作者はそれほど陰陽道に詳しいわけではないので、大雑把なイメージで描いていますが、土は水を吸い取ってしまうことから土(土気)は水(水気)に勝つということのようです。
  
天邪鬼のルーツ【天探女】   
本編にも少し説明がありますが、『天邪鬼(あまのじゃく)』のルーツとも言われている女神です。
ちなみに、物語中に登場するこの女神の性格や性質には、かなり作者の私的解釈+妄想が入っています。
なんとなく小悪魔系(?)の性格になっているのは『天邪鬼』のイメージから、『嘘』を使ってその場を治める能力には、古事記の中の彼の女神のエピソードから着想を得ています。
ヤトノカミの口にしている『嘘の使いどころを間違えて主を死なせた』というのも、そのエピソードに由来しています。

余談ですが、『天探女』と書いて『あまのじゃく』と読ませるルビの振り方は、夏目漱石の小説『夢十夜』にも出てきます。個人的趣味で、使ってみたかったんです。
  
 
  ※このページは津籠(つごもり) 睦月(むつき)によるオリジナル・ファンタジー小説花咲く夜に君の名を呼ぶ(古代ファンタジー小説)
  ストーリーや用語に関する豆知識やこぼれ話・制作秘話などを蛇足に解説したものです。
  解説の内容につきましては資料等を参考にしてはいますが、諸説あるものもございますし、
  管理人(←歴史の専門家ではありませんので)の理解・知識が不充分である可能性もありますのでご注意ください。
人物名・神名等は敬称略とさせていただいています。
ファンタジー小説解説―へびさんのあんよ
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