空は青く
「よう、フィグ!久しぶりだな」
「早いな。またお前が一番乗りか」
「どうしたんだよ。そんな
背後からかけられた三つの声にフィグは
「……なんだ、ソレは」
フィグの視線の先には、三人の少年の乗る
「これか!スゲーだろ!馬の代わりに魔法のホウキを使った“空飛ぶ馬車”……あ、
「……俺の目には二本のホウキの後ろにリヤカーがくくりつけられてるだけの
「そうさ。俺は既存の物語からしか夢晶体を
「いや、僕たちは止めようとしたんだけどリモンが聞かなくてさ……。ほら、リモンって夢術師目指してるから」
「性能はともかく見た目がなぁ……。
小声で言い
「まあ仕方ないだろう。オリジナルの夢晶体ってのは全部を自分で考えなければいけない分、既存の物語を形にするより高度なセンスと想像力が必要とされるからな」
「なんだ、その言い方。まるで俺にセンスと想像力が無いみたいじゃないか」
「まあまあ。こんな所でダラダラしてないでとっとと鉱石谷に入ろうぜ」
三人が
鉱石谷は“世界樹の切株”を取り囲むドーナツ状の深い谷の一部だ。入口付近には切り出された夢鉱石を加工する
四人は森に入るとすぐに別行動をとりだした。鉱石谷に実る夢鉱石は、実る木によりその色も形も異なっている。四人はそれぞれ目当ての夢鉱石を探し出し、枝に登ってもぎ取ったり、下からパチンコで
約一時間後、ポケットいっぱいに詰め込んだ夢鉱石を手に四人が向かったのは、夢鉱技師ハーメドの
「おぅ。今日も来たか。今度は何が欲しいんだ?」
「
フィグが手にしたそれは
「あーっ!ずるいぞフィグ!それは俺も
カリュオンが横から割り込みフィグの手にした千里眼鏡を
「だったらお前、今手にしてる鉱石ラジオはどうするんだよ?二つともは無理だろう」
「じゃあラジオはやめてこれだけにする!だったらいいだろ!」
「こらこら。人の店で勝手にケンカを始めるんじゃない。それじゃあ公平に、
ハーメドは二人の
「ふむ……。
フィグの採ってきた夢鉱石を横目で見て、カリュオンは勝利を確信したような笑みを浮かべた。
「なんだ、フィグ。全然採れてないじゃないか。
「いや、今回はフィグの勝ちだ」
鑑定を終えたハーメドがカリュオンの手の中の千里眼鏡をひょいと取ってフィグに渡す。
「何でだよ!?数も石の大きさも俺の方が上じゃないか!」
「まあ、単純に石の数と大きさだけだったらお前さんの勝ちで良かったんだがな。より価値の高い方と言っただろう?夢鉱石の価値は大きさや種類だけで決まるものではない。色・形・傷の有無、そして何より
その言葉に、少年たちは
「えっ?フィグって
「いやいや、俺はてっきり夢術師になりたいんだと思ってたぞ。だって夢
「そうだよ。リモンよりよっぽどセンスも想像力もあるのに、もったいない」
「……夢術師なんて、ほんの
フィグの言葉に三人の友人たちは
「
「
ムッとしたように黙り込むフィグにハーメドも苦笑する。
「そうだなぁ。やりたいことや
「夢……」
『いつか俺はこの島の外に出るんだ。ギリシャ神話やケルトの妖精や神仙の生まれた国を自分の足で
「夢なんて、実現可能なものじゃなきゃ意味ないさ」
「しかしハーメドさんも人使いが荒いよね。帰るついでにおつかいしていけなんてさ」
「そうそう。しかも記憶の森じゃ帰るついでどころか遠回りだってのに」
記憶の森――それは島の“外”で生まれたあらゆる
「で?その届け物ってのは一体何なんだ?夢鉱技師志望のフィグなら分かるだろう?」
フィグはハーメドに渡された
「
「うへー、
カリュオンの疑問はほどなくして
「おい、ちょっと、あれ……レグナースご
リモンが信じられないといった
「ああ、うん。そうだね。今日はここで
記憶の森にいたのは、六才から十四才までのレグナースたち五十数人と、その
「小女神宮・
「は、はいっ!」
裏返った声でリモンが答えると、レグナースの集団からくすくすと笑い声がこぼれた。
「なぁに、あの乗り物。二本のホウキの後ろにメタリックレッドのオープンカー?すっごく変」
聞えてしまった
「……だから言ったのに」
「何がだよ。リヤカーよりはカッコよくなってるだろ!?」
「リモンはそもそもセンスがおかしいんだって。どう考えたってホウキは
「ホウキが無かったらただのスーパーカーになっちまうじゃんかよっ!」
言い争う三人を無視し、フィグは
「ちょ……っ、ラウラっ、あんた何やってんの!男の子なんかに手ぇ振ってたら、またシスターに怒られるよっ」
ラウラと同年代と
「なんでダメなの?」
ラウラがきょとんとした顔で問うと、そばで話を聞いていた黒髪のレグナースが
「相変わらず
「アメイシャ……その言い方は少しきついと思うわ」
まるでフランス人形のような美しい
その時、まるでその視線を
「おつかいご苦労さまでした。それではお気をつけてお帰りなさい」
まるで「さっさと帰れ」とばかりに
「……あー、でもマジで
森からだいぶ離れたところでやっとリモンが口を
「えー?でも性格キツそうじゃなかったか?やっぱり俺はアプリ様派だね。アプリコット・アプフェル様。見た目だけならダントツ一番じゃん。いかにもお
「アーちゃ……じゃなくて、アプリ様は見た目だけじゃなくて性格も一番優しいよ。小女神宮に上がった
それまでの沈黙が
「おいフィグ、お前はどのレグナースがいいんだよ?」
ふいに話を
「は?」
「『は?』じゃねぇよ。どうしたんだ?さっきから全然しゃべってないぞ。まさかレグナースに本気で
「……そんなんじゃねーよ」
「あ!そう言えば、あの手ぇ
「……ああ。そうだが」
「確か、ラウラ様とか言ったっけ。あのレグナースも
「そうだよな。手ぇ
「は!?ラウラが
思いもよらなかった言葉を聞かされフィグは目を
「
「そうそう。いかにもレグナースって感じでさ。見てると
「……どこがだよ。あんな
フィグはひとり