フィグが
「
「ああ。まあ……あちこち、な」
「あんた、まさかとは思うけど、未だにラウラ
フィグはぎくりとして母親の背中を見つめる。
「分かってるでしょうけどね、いくら
夏風岬にはフィグの家族であるフィーガ家を
「……分かってるよ。小女神宮を出て
「『ただの女』?失礼ね!大人の女性と言いなさい!だいたい母親に向かってその態度は何なの?母さんだって昔はレグナースだったんですからね!」
「島の女は
この島には“女の子”が存在しない。
それまで他の子どもたちと接する機会の無かったフィグがそれを知ったのは、ラウラが六才になった時のことだった。当時、まだ何も理解できず、小女神宮からの迎えにラウラが得体の知れない集団に連れて行かれると思い込んだフィグは、
幼い
自室に戻ると、机の上にはいつの間にか水色の紙ヒコーキが届いていた。ラウラが岬を出た後に交流を持つようになった“
『フィグ・フィーガへ
明日、
ビルネ・ビネガー』
返事の紙ヒコーキを空へ飛ばし、フィグはふと思いついたようにもう一枚便せんを取り出した。
『ラウラへ。
今日お前が
夢見の娘選考会までもうそんなに日がないんだろう?
フィグ』
その夜、フィグは夢を見た。フィグはまだ生まれて一年
「ほぅ。よく眠っておるのぅ。良い子じゃ」
言いながら老人はいつの間にかその手に持っていた赤い
「おい待て!あんた、俺に何する気だ!?」
「ほぅ。起きておったのか。……いや、お前さんはこの子であってこの子ではないのぅ。
「何を言ってるんだ。あんた誰だ?」
「わしは
そう言い、老人は有無を言わせずフィグの足首に赤い縄を巻きつける。太い縄に肌を
「ちょっと待て!なんで足に縄なんだよ!?運命の相手との間に結ばれるものと言ったら、小指と小指の間の赤い糸じゃないのか!?」
「ほっほっほ。それは
「それはそうかもしれないけど……っ!ちょ……っ痛いって!そんなに
「ほっほっほ。
老人は縄の片端をフィグの足首に結び終えると、もう片方の端を持って窓から出て行こうとする。
「待て。あんた、その縄を誰に結ぶ気だ?」
「ほぅ。知りたいのか?己の運命の相手を」
笑いながら、しかし妙に
「……知りたいさ。だって、どうせこれは夢なんだろう?だったらオチも見ずに目覚められるかよ」
「ほっほっ。
「うわっ!?」
老人に
灯台の外は夜の
満天の銀の星あかりを
「ほれ、あの家じゃ。
家の中からは
「生まれたぞ!レグナースだ!ああ……なんて
白いおくるみに包まれ、男の
「……ラウラ」
「さて、と。では仕事を
老人は壁をすり抜け赤子のラウラに歩み寄っていく。そしてどうやったのか、おくるみに包まれたラウラの小さな足首に赤い縄の片端を結ぶと、ひょこひょことフィグの
「ほぅ?言葉も出ぬほど驚いておるのか?己の運命の相手に」
「逆だよ。あまりにも意外性がなくて
「
「
「ほっほっ。まだまだ若いのぅ。今までずっと同じ関係だったからと言って、これからもそうだとは限るまい?」
そう言ってからかうように笑った後、ふっと老人は
「そう。紅線でつながれておるからと安心していてはいかんぞ。この世の中に変わらぬものなど無いのじゃからな。運命でつながれた