第1話: :序 
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序 忘れられた創世神話

 それは途方(とほう)もない歴史の果てに、語り()ぐ者も途絶(とだ)えてしまった遠い過去の出来事(できごと)
世界の(つく)()(いま)だ人類と共に暮らしていた時代の、忘れられた最後の記録だ。

「もう、行ってしまわれるのですか?」
 粗末(そまつ)皮衣(かわごろも)に身を包んだ少女が問う。〝彼〟は()()き、(うなず)いた。
「私の正体が露見(ろけん)してしまった以上、もうここにはいられない。君も見ただろう?私が何者かを知った途端(とたん)、誰もが手前勝手(てまえがって)(のぞ)みを押しつけだした。無論(むろん)、それを()めるつもりはない。人類とはそういうものだと何より私自身が知っているからな。だが、偶然(ぐうぜん)に出会ったということを理由にこの集落の人間だけを特別扱いすることはできない。願いを(かな)えてやれないと知りながら彼らと共に()り続けるのは私にも(つら)いことなのだよ。もう、この先こうして人間と(まじ)わることもないだろう。さらばだ」
「お待ち下さい!」
 少女は必死に呼びとめた。
「この先もう人類と関わるつもりが無いと(おっしゃ)るなら、どうかその前に一つだけ、願いをお聞き届け下さい!」
 その言葉に〝彼〟の表情が(けわ)しくなる。
「君も私に望むのか。私の言葉を聞いたにも関わらず。一体何を望むと言うのだ?」
「〝希望〟を」
 少女は〝彼〟の(きび)しい目にも(おく)することなく、はっきりと答えた。
「あなたのお(つく)りになったこの世界は、生きる者にとってあまりに苛酷(かこく)です。心無き(けだもの)ならともかく、感情も知性も与えられた我々にはとても()えられません。どうか、せめて我らに〝希望〟を与えて下さい。この世を生き抜く支えとなる一欠片(ひとかけら)の希望を……」
 〝彼〟はしばし沈黙(ちんもく)した。()みしめるように少女の願いを頭の中で(めぐ)らせた後、〝彼〟は静かに告げた。
「では、お前たちに〝世界〟をもう一つ(おく)ろう」解説ページへ(別窓が開きます)


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このページは津籠 睦月によるオリジナル・ファンタジー・ネット小説「夢の降る島」第1話夢見の島の眠れる女神の本文ページです。
 ジャンルは冒険ファンタジー小説、構成要素は恋愛・青春・冒険・アクションなどです。
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【ミニ内容紹介】希望を望んだ少女に神が贈った『世界』とは…?
夢と希望を探し求めるピュアな幼心(おさなごころ)ファンタジー小説。
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