コトバのラクガキ

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傷つきやすいからこそ見えるもの

強過ぎる感受性を、(うと)ましく思ってきた。
ほんのささいな言葉や出来事に傷つき、(おび)えてばかりいた。

だけど、そんな繊細に過ぎる心を持っていたからこそ、
見つけられたものがある。

きっとあの頃、あんなにも世界が美しく見えていたのは
そんな強過ぎる感受性ゆえだ。

人間(ひと)は皆違うから、同じ景色を目にしていても
心に映るものは違う。

季節ごとに変わる世界の色、通学路の緑のトンネル
雨の日の灰色に(にご)った川の水面(みなも)さえ美しく見えていたのは
この心に はまった特別なレンズゆえだ。

このレンズは受ける痛みを何倍にも大きくしたけれど
世界の美しさもきっと、何倍にも増してくれていた。

きっと、こんな傷つきやすい自分でなければ
世界の美しさに気づくこともなく
あの頃出逢った景色も、音も、風の手触りも、
心に刻むことなく忘れてしまっていただろう。

こんな自分で良かった、とまでは思えなくても
たぶん、こんな自分でなければ駄目だったのだろう、とは思っている。

 

  

 
  
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