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救いを拒否する救われたがり

もしも世界のどこかに
この世の悩みの全てを解決できる万能の人間がいたとして
この世界の全ての人間を救いたいと思っていたとしても、
果たしてその人間は、
この世界の人々を余さず救うことができるだろうか。

きっと、できないと思う。

この世界の人間の大半は、救いを求める言葉を口にしながらも
結局は自分にとって都合の良いものしか受け入れようとしないから。

どんな良薬でも、(にが)ければ口にせずに捨ててしまう。
どんな賢人であっても、邪魔になれば罪もなく殺してしまう。

そうしておきながら平然と
「なぜ誰も助けてくれないんだ」と怒る。

人間の原罪とは、こんなどうしようもなく救いがたい
(おろ)かさのことを言うのではないかと思うほどに。

愚かさはきっと両刃(もろは)の剣だ。

相手だけでなく自分自身さえ
絶望に突き落とす“病み”だ。

たとえその愚かさを、相手が許してくれたとしても
いつかその愚かさの(むく)いが、
自分自身にはね返ってくるんだ。

 

  

 
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