ファンタジーな豆知識

ルートヴィッヒ2世の造った3つの城

現在のドイツ・バイエルン州にかつて存在していたバイエルン王国には、中世騎士物語やフランスのヴェルサイユ宮殿に憧れて、自らの夢見る城を次々と築いた王様がいました。

彼の名はルートヴィッヒ2世。物語世界に心酔していたことから「メルヘン王」、そして度重なる城の建築により財政を傾けたことにより「狂王」と呼ばれた彼が生涯に建てた城の数は3つです。

今回はそんなルートヴィッヒ2世の造った3つの城をご紹介します。

ノイシュヴァンシュタイン城
 
ミュンヘンでワーグナーの歌劇「ローエングリン」を見て夢中になったルートヴィッヒ2世が王として即位して5年後に建設を命じた城です。
 
ディズニーランドの「シンデレラ城」のモデルとしても有名で、その名は「新しい白鳥の城」を意味します。
現在はロマンティック街道のフィナーレを飾る城として、多くの観光客が訪れています。
 
城はルートヴィッヒ2世の住む「居住区」と「騎士の館」から成り、その姿は中世ドイツ風です。
デザインは建築家ではなく宮廷劇場の舞台美術家が担当し、城内のあちらこちらにワーグナーの歌劇のモチーフが見られます。
居間の壁には白鳥を連れた騎士「ローエングリン」の姿が、寝室の壁には「トリスタンとイゾルデ」の場面が描かれ、洗面台の蛇口は白鳥の形をしています。
さらには城内に歌劇「タンホイザー」に登場する「ヴィーナスの洞窟」をイメージし、天井から鍾乳石の垂れ下がる人工洞窟風の部屋まで再現しています。
 
その一方で、暖房や水洗トイレ、電話機などの近代的な設備も整っており、交換台を通して別の城と通話することもできました。
 
リンダーホーフ城
 
「太陽王」と呼ばれたフランスのルイ14世に憧れたルートヴィッヒ2世がヴェルサイユの「小トリアノン宮殿」を模倣して建てさせた城です。
 
3つの城の中で一番小規模だったため、彼の存命中に完成した唯一の城となりました。
 
城の庭にはたくさんの東屋があり、なかでも「ムーア人のキオスク」という東屋は、パリ万博に出品されていたものをルートヴィッヒ2世が買い取って移築したもので、アラビアン・ナイトの宮殿風の内装にクジャクの玉座が置かれたとても豪華な建物になっています。
 
また、城の敷地内にはノイシュヴァンシュタイン城のものよりさらに規模の大きな「ヴィーナスの洞窟」が造られています。
こちらの「ヴィーナスの洞窟」はワーグナーの歌劇の場面が描かれていたり、壁から滝が噴き出して人工の池に注いでいたり、照明や暖房、人工の波を起こす装置までありました。
さらルートヴィッヒ2世は、この照明のためにバイエルン初の発電所まで造らせたと言います。
彼はこの洞窟内の池に金の小舟を浮かべて物語の世界に浸っていたのです。
  
ヘレンキームゼー城
 
キーム湖に浮かぶ島に建てられたもので、フランスのヴェルサイユ宮殿をそっくりそのまま再現しようとした城です。
 
入口を入ったところには、本家のヴェルサイユ宮殿では1752年に取り壊されてしまっていて見ることのできない「南の階段」が見られます。
 
城内には金一色で飾られた「ルイ14世の寝室」や本家ヴェルサイユ宮殿よりも長い「鏡の間」、さらには本家には無い大理石造りの温水プールやガラスの屋根などがあります。
 
しかし度重なる城の建設により財政が悪化、ついに建設費は行き詰まり、70室ある部屋のうち50室が未完成のまま、南の階段と対をなす「北の階段」もコンクリートやレンガがむき出しのままとなっています。
 

※このページは津籠 睦月によるオリジナル・ファンタジー小説「夢の降る島」の第1話「夢見の島の眠れる女神」夢見の島の眠れる女神(小説ロゴ)の「おまけコーナー」で、ファンタジーな雑学や豆知識を紹介しているものです。

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