ファンタジーな豆知識

ヴェルサイユ宮殿にあった意外な施設・設備

ヴェルサイユ宮殿と言えば、言わずと知れた「ベルサイユのばら(※)」の舞台であり、ヨーロッパの宮殿・城館の中でも特に有名かと思われます。

そんなヴェルサイユ宮、実はその歴史の中で数々のユニークな施設・設備を備えていたことがあるのですが、今回はそんな「ヴェルサイユ宮殿の意外な施設・設備」についてご紹介していきます。

(今回はあくまで「意外な」施設・設備に絞っていますので、国王・王妃の居室など、宮殿にあって当然の設備には触れません。そちらについては、こちらの「フランスの城・宮殿に関する事典」をご覧ください。)

メナジュリ(小動物園)
 
その名の通り小さな動物園≠ナす。
ペリカンなどの珍しい鳥や、美しい鳥たちの他、ラクダや象が飼われていたこともありました。
このメナジュリはフランス革命の最中に廃止され、動物たちはパリ植物園に移されました。
フランスの王が別荘などの庭園にこのメナジュリを設けるのは、中世以来のしきたり≠セったそうです。
 
(ちなみにヴェルサイユ宮殿は、当初はルイ13世の狩猟のための中継所として造られた「ヴェルサイユ村」の小さな邸館で「田舎貴族の小別荘」と軽蔑されていたそうです。ヴェルサイユ宮殿を現在のような姿に変えたのは『太陽王』と呼ばれたルイ14世でした。)
 
グロット(人工洞窟)
 
元は古代ローマの別荘(ヴィラ)の庭園に造られていた「グロッタ」で、16〜17世紀にヨーロッパの庭園で再び流行し、ヴェルサイユ宮殿にも造られました。
人工洞窟≠ニは言え、“岩でゴツゴツした自然の洞窟”を模したものではなく、貝殻やサンゴ、美しい石や鏡で装飾され、無数の噴水が吹き出すなど、今で言うテーマパークのアトラクション≠フような、まるで異世界に迷い込んだかのような幻想的な雰囲気を味わえる施設でした。
 
(ちなみに“ゴツゴツした岩の洞窟”を人工的に再現した城も存在します。シンデレラ城のモデルとしても有名なノイシュヴァンシュタイン城は城内に歌劇に登場する洞窟が再現されています。)
 
ヴェルサイユ宮殿のグロットは、「シンデレラ」や「長靴をはいた猫」などの「おとぎ話」の作者として有名なシャルル・ペローが構想したもので、ギリシャ神話に登場する海に沈んだ太陽が休息をとる海中洞窟≠イメージしたものだったようです。
このグロットは1684年に取り壊されました。
その跡は、現在の宮廷礼拝堂の玄関の間になっています。
 
(ちなみに異様さや不気味さなどを表す「グロテスク」は建築用語では「洞窟風(グロテスコ)」な装飾を意味する言葉で、古代ローマのグロッタには前述のような貝や石をはめ込んだ装飾や漆喰彫刻の他、人体や植物や獣の各部を絡み合わせたりアレンジしたりした奇妙≠ネモチーフが見られます。
ラファエロは、ネロの黄金宮を発掘調査していた時にこれらのグロテスク装飾を発見し、建築装飾に多用するようになったそうです。
そして彼の弟子たちが、この装飾をイタリア中に広めることになります。)
 
オランジェリー(オレンジ温室)
 
ヴェルサイユ宮の花壇の下に造られていた半地下の建物で、冬の寒さに弱いオレンジやレモンの果樹を育てるための温室でした。
緯度の高い国では屋外で南国産の果実を育てることは不可能であり、オレンジを所有することは特権階級のみに許された富の象徴≠フひとつでした。
(オランジェリー自体のさらに詳しい説明はこちら→「恋愛群像ヒストリカ用語辞典:オランジェリー(オレンジ温室)」)
 
ラマース
 
丘の斜面に造られたレールと、その上を走る台車(そり)で、今で言うジェットコースターのようなものです。
斜面を猛スピードで滑走して小さな谷の底まで下り、そこから再び斜面を駆け上がり、減速して終点に到着しました。

その他、庭園にはブランコやシーソー、迷路などもありました。 迷路は生垣を迷路の壁になるように植え、表面を綺麗に刈り込んで造られました。

ヴェルサイユ宮の迷路はグロットと同じくシャルル・ペローのアイディアで、迷路の小道の全ての交差点に全部で39もの小さい池が造られ、どの池にも有名な寓話の場面を表現した彫刻が飾られていました。

この迷路は1774年に取り払われ「王妃の林(ボスケ・ド・ラ・レーヌ)」に変わりましたが、彫刻の一部は現存し、大厩舎(グランド・ゼキュリー)博物館に展示されています。

 
参考文献:「ヴェルサイユ宮―華麗なる宮殿の歴史」ジャン・クロード・ル=ギュー(イラスト・文)/飯田喜四郎(訳)
※「ベルサイユのばら」とは、主にヴェルサイユ宮殿を中心とし、男装の麗人オスカルや幼馴染のアンドレ、王妃マリー・アントワネット、スウェーデンの貴族フェルゼンなどがフランス革命へと至る運命に翻弄されていく様子を描いた池田理代子さんによる漫画作品です。日本テレビ系列にてアニメ化された他、宝塚歌劇団によって舞台化もされています。

※このページは津籠 睦月によるオリジナル・ファンタジー小説「夢の降る島」の第1話「夢見の島の眠れる女神」夢見の島の眠れる女神(小説ロゴ)の本文ページ内に隠された、本編と関係がありそうで無さそうな細かなファンタジー雑学・豆知識をご紹介する「おまけコーナー」です。

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