〜キョウ カラ、アナタ ハ ワタシ ノ ズットモ〜
入学したての学校は、まだその景色にもが消えない。
六年間も通い慣れた小学校とは何もかもがよりも不安の方が大きい。まして、あんな話を聞いてしまったのならなおさらだ。
(まさか、この学園が。ママ、知ってて私にココを
今も、知らないうちにしながら
「そんな風にずっと気を
「ぅひゃあ……っ!?」
ふいに声をかけられ、
「
「……例の奴が校内をウロついていないか、皆が登校してくる前にチェックしていたからな。残念ながらシッポはつかめなかったが」
当然のことのように言われ、今の今まで『校内をパトロールする』などという。
「す、すみませんっ!私、何も考えてなくて……。そういうの、必要なんですよね……?」
だが猫神は。
「お前のような初心者がウロついたところで意味は無い。お前、まだ
「え?あ……そうかも知れない……です」
昨日ショッピングモールでクラスメイトに
「……まぁ、経験を
言いたいことだけ言うと、猫神はエデンの返事も
「あ……」
(また、
なぜかエデンのことをよく分かっていて、落ち込みかけると、すぐにさりげなくフォローしてくれる。ずっと前から知っている気がするのに、思い出せない。彼の正体が、気になって気になって
(
に
エデンはそんな不安な気持ちを、
。
木の床だ。廊下と教室を
エデンは、まだ顔と名前を一致されるのがやっとのクラスメイトたちに「おはよう」のあいさつをしながら教室に入り、真っ
「おはよう、
ほんの少し
「おはよう鈴木さん。
「え……!?」
。
「
「あ、そのこと……」
エデンはホッと胸を。
(そうだよね。ピ……高梨さん、ずっと気絶してたもん。結界の中で起きたことを知ってるはずがないよね)
「もう体調は
「大丈夫。一応病院にも行ったけど、何ともないって」
「そうなんだ。良かった」
それきり、会話が
こちらの質問には答えてくれるが、向こうからは話をが、何の話題を出せば良いのかサッパリ分からなかった。
(あいかわらず無口だなー……。どうやって仲良くなったらいいんだろう。例の災厄の獣のこともあるし、なるべく高梨さんのそばにいなきゃなのに……)
ビミョウな を指差した。
「そろそろ時間。先生来るかも」
「えっ?もうそんな時間?あっ、じゃあ、また後で……」
何が『また後で』なのかもよく分からないまま、そんな言葉で会話を切り上げ、エデンはあわてて自分の席へと
(どうしよう……。そもそも私、まだちゃんと“友達”作れてない……。このまま高梨さんとも仲良くなれなかったら、私の中学生活、どうなっちゃうんだろう……)
エデンはその後、休み時間のたびに彼女の元へ行き、仲良くなろうと話しかけた。
だが、
(ど、どうしよう……お弁当、どこで食べよう……)
エデンも母の
エデンが学校を一日休んでいた間にもクラスの女子たちのグループ化は進んでいたらしく、昼休みになるとすぐに教室のあちこちでグループ同士、しながら彼女を探す。
「た……」
うろたえるエデンの目に、彼女が別のクラスメイトに話しかけられている姿が映り、エデンは心臓をきゅっと
(え……っ、高梨さん、、私、ぼっちになっちゃう……っ!)
だが、そのクラスメイトはくるりと
「鈴木さん。良かったら鈴木さんも一緒に食べない?」
「……えっ?」
思いがけない
「私のこと、
まだ入学して日の
入学式で新入生代表のあいさつを行い、クラスでは当たり前のように委員長に選ばれていた、見るからに頭の良さそうな
「あ、うん。
「
会話を初めて一分もさは心に
「久留宮だから“くるみ”なんだね。よろしく、くるみちゃん。私のことも……」
(どうしよう……下の名前では呼ばれたくないんだけど……)
エデンは自分の名前にコンプレックスを持っている。キラキラネーム
が
言葉を
「ユカちゃん、ハイ、お弁当」
「“くるみ”だって言ってるでしょ、まゆ」
「あっ……そっか。そうだったわね、くるみちゃん」
あわてて言い直し、その少女は
「鈴木さんに高梨さん、はじめまして。
真雪はまるでのような、ふんわりした
美少女
だった。
と柔らかそうだ。
(……でも、何だろう。しゃべり方が何となく、ヨソの家の上品なお母さんみたい……)
声は
「こんな所で立ち話をしてないで、さっさと机をくっつけちゃいましょ。お弁当を食べる時間がなくなっちゃうわ」
真雪に
「うわぁ……鈴木さんのお弁当、可愛いわね。そのワンちゃんはチーズでできているのかしら?」
エデンが弁当箱のフタを開けると、スライスチーズで作られたゴールデン・レトリーバーと目が合った。横にはハート型に”をしているように見える。エデンは思わず
(……絶対レトのしわざだよね、コレ。……まったく、何やってるんだか……)
「……私のも、たまにはああいうカワイイのがいい」
エデンの弁当をじっと見つめボソッとつぶやいたくるみの前には、肉だんごや卵焼きや
「作ってもらっておいて
その
「もしかしてそのお弁当、
「ええ。ユカちゃ……くるみちゃんのお母様はお
「仲がいいんだね……」
「ええ。だってユカちゃ……くるみちゃんが赤ちゃんの時から見てきたんだもの」
その台詞は
「そうやって子ども
その態度は母親に反発する思春期の娘のように見えた。だが本気で怒っているわけではないらしく、その声にはどことなく甘えのようなものがにじんでいる。『真雪が相手なら多少キツいことを言っても
(何か入り込めないフンイキ。この二人と友達になっても、私はオマケみたいな感じになっちゃうんだろうな……)
くるみも真雪も食事中エデンに何かと話しかけてくれたが、まだ会って
(さみしいけど、
そんなことを思いながら、エデンはちらりと隣を見る。
(ピ……高梨さん、くるみちゃん達が相手でも変わらないなぁ……)
くるみはもちろん、おしゃべり
(高梨さんって、そもそも友達作る気あるのかなぁ?元からの知り合いがいない学校なら、フツーは『早く友達作らなきゃ』って、あせるものなんじゃないのかなぁ?)
グループには入れてもらえたが、くるみと真雪の仲には
(やっぱり時間に限りのある休み時間とかお昼休みじゃ、いろいろキビシイものがあるよね。ここはもう、放課後どこかに
結局彼女とロクに話もできないまま迎えた帰りのホームルーム、エデンは頭の中で計画を
(どこに誘おうかな。高梨さんって何通学なんだっけ?校外よりむしろ学校の
アレコレ考えているうちに、いつの間にかホームルームは終わっていた。周りの生徒が動き始めてやっとエデンは我に返る。
(ピ……高梨さんは……っ!?)
立ち上がって教室を見渡すと、ちょうど彼女がドアから出て行くところだった。エデンはあわてて
ポニーテールのとした後ろ姿は、スタスタと足早に遠ざかっていく。引き
「待って……っ、ちゃん!」
真っ
――高梨。それが彼女のフルネーム。そしてエデンが彼女と「仲良くなりたい」と思った最初のキッカケだった。
彼女の名前を初めて聞いた時、エデンは
(スゴい……。私よりキラキラネーム
な人なんて初めて。きっと
エデンはそんなことを思った。そしてずっと、彼女と仲良くなる機会を
「『ピーチ』って呼ばないで。その名前、嫌いなの」
そしてすぐにエデンに背を向け去って行ってしまう。表情こそ変わらないものの、その気配はいつもよりピリピリ
とがっている気がした。桃姫の気持ちがよく分かるエデンは己のウッカリ発言に青ざめる
。
(どうしよう……っ、私、)
しばらくはショックのあまり
(
あわてて桃姫のと静電気のようなものを感じて、エデンは立ち止まった。
(今の……レトの結界に引き込まれる直前に感じたのと同じ……?)
直後、いつもの
「もうッ!今はそんな場合じゃないのに!」
のように変化した
「やだ……っ!戦いたくない……っ!」
「エデン!」
視界もぼやけていく中、誰かが手をの姿が一瞬浮かんで、消えた。
このページは津籠 睦月によるオリジナル・ファンタジー小説の本文ページです。
構成要素は恋愛(ラブコメ)・青春・魔法・アクションなどです。
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