Episode3:今日 is ideal day for 初デート<2>

〜キョウ ハ、ハツ デート ビヨリ〜

「……とは言ったものの……男の人と二人きりで出かけることに変わりはないんだよね……冷や汗
 翌日(よくじつ)、日曜日の朝。エデンは姿見(すがたみ)の前でアレでもない、コレでもない、と服を取り出し身体(からだ)に当ててみては元に(もど)す、ということをくり返していた。
(う〜ん……。(なん)か、コドモっぽいような……。小学生の時はフツーに()てたんだけどな……ため息
 音符(おんぷ)音符 やネコ猫 やリボンリボン のポップなプリントが()りばめられたレースの(えり)()きのミントグリーンのトップスを手に、エデンはため息ため息をつく。女子小学生に人気(にんき)のブランド物で、お気に入り()ぎてほとんど(そで)(とお)していないほどの一着(いっちゃく)ではあるのだが、あのレト(なら)んだところを想像(そうぞう)すると、(なん)ともつり合わない気がしてならない
(……と言っても、(ほか)に着ていけそうな服なんて無い、か……。あとは普段着(ふだんぎ)ばっかりだしため息
 ベッドの上に(なら)べた、やや着古(きふる)した感のある他の服たちを見渡(みわた)した後、エデンは(ふたた)びため息ため息をついて手にしていた服に着替(きが)えだした。
 春らしいミントグリーンのトップスと、歩くたびにふわりと広がる、アイボリーシフォンプリーツ水玉模様(みずたまもよう)チュール(かさ)ねたスカート。足には、はき(ぐち)レース のふちどりと細いサテンリボンのついた水色と白のボーダー(がら)のソックス。おかっぱ頭のサイドにはレース素材(そざい)のリボン(がた)スリーピンをとめる。
「だいじょぶ、だいじょぶ!本気(ほんき)のデートじゃないんだし!お買い物に行くだけだし!」
 (かがみ)の前で自分に暗示(あんじ)をかけるようにそう言い聞かせ、エデンは「いざ、出陣(しゅつじん)!」というキャッチコピーでも()いていそうなくらいに気合いの入った顔でドアを(ひら)く。その(とびら)の先には……
「あ、姫君(ひめぎみ)……よくお似合(にあ)いです赤面!まるで春の妖精(ようせい)のように可憐(かれん)です!(おれ)のためにそんなオシャレしてくださるなんて……感激(かんげき)です赤面
 うれしさが(おさ)えきれない、と言うように、はにかみはにかみ言葉(ことば)(つむ)ぐレトがいた。その姿(すがた)一旦(いったん)、頭のてっぺんからつま先まで(なが)め回した後、エデンは廊下(ろうか)へ出ることなく、無言(むごん)のままドアを()める。
「えぇっ!?ちょ……っ!姫君……っ!?汗
「何なの!?何なの、そのカッコは……!赤面汗何でそんなコジャレたカッコしてんの!?ただでさえ緊張(きんちょう)してるのに……そんなにハードル()げないでよ……っ!汗
 昨日(きのう)までは白シャツにジーンズという、ごくごくラフな格好(かっこう)だったレトが、今日はロング(たけ)スプリング・コートに、見るからに上質(じょうしつ)そうな素材(そざい)のカラーシャツ、折り目のぴっしりしたベージュのパンツ、前髪(まえがみ)も一部セットしてきっちり感を出しつつも、首元にフリンジ付きのストールをゆるく()いたりしてさりげないルーズをかもし出している。まるでファッション()のメンズモデルかと思うような、エデン以上にばっちり気合いの入った姿(すがた)だ。
「あの……マイカ先輩(せんぱい)見立(みた)ててもらったんですが……ダメですか?」
「ダメとかじゃないくて……!一緒(いっしょ)に歩く私がコドモっぽ()ぎていたたまれないよ……っ汗。やっぱヤダ!お出かけ、やめる!」
「そんなっ……姫君〜っ!お(かんが)(なお)しください!」
「……何ヲさわいでいるノですカ?」
 廊下(ろうか)から聞こえた母の声に、エデンは(すく)いを求めるようにドアを()け、(うった)える。
「ママっ!いくら魔法(まほう)の力を高めるためだって、デートなんてやっぱりヘンだよね!?汗デートってそういうものじゃないよね!?汗
 だがコーデリアはにっこり微笑(ほほえ)んで、その必死の(うった)えをあっさりと退(しりぞ)けた。
「エデン、デートは“場数(ばかず)”でス。(こい)相手(あいて)でもナイ男の人相手にそんなニ怖気(おじけ)づいているようデハ、本命(ほんめい)相手とのデートで上手(うま)くいくコトはムズカシイのでス。主人に危害(きがい)(くわ)える(おそ)れのナイ契約の獣(エンゲージド・ビースト)ならバ、“練習相手(れんしゅうあいて)”には最適(さいてき)なのでス。アナタもそろそろ年頃(としごろ)のレディー。この機会(きかい)に男の人とのコミュニケーションを(まな)んでくるのでス」
 有無(うむ)を言わせぬ口調(くちょう)でそう(さと)すコーデリアに、エデンは((おこ)ると(こわ)いが)いつも(やさ)しい母の顔ではなく、男を翻弄(ほんろう)する百戦錬磨(ひゃくせんれんま)の“魔女(まじょ)”の顔を見た……ような気がした。
「ホラ、おこづいかいをあげまスから、行って来るのでス。コドモっぽい服がイヤなら、ついでにもっと大人(オトナ)っぽい服を買ってくればイイのでス」
 母にまでこう言われてしまえば、もうエデンに抵抗(ていこう)する(すべ)などない。エデンは注射(ちゅうしゃ)をガマンする子供(コドモ)のような顔で、しぶしぶおこづかいを()()った。

藤花
 
 
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  このページは津籠 睦月によるラブコメ・ファンタジー小説 「魔法の操獣巫女(マジカル・ビーストテイム・シャーマン)★エデン」の
シンプル・レイアウト(デコレーション・モードLV2)版です。
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シンプル・レイアウト版は用語解説フレーム版より後に制作しているため、ストーリーが若干遅れています。
 
 
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