Episode3:今日 is ideal day for 初デート<13>

〜キョウ ハ、ハツ デート ビヨリ〜

 “(ゲート)”を()けると、そこはもうショッピング・モールの日常風景の中だった。
 門をくぐり抜けている間に変身も()け、エデンたち三人は元通りの姿(すがた)雑貨屋(ざっかや)片隅(かたすみ)に立っていた。
 だが、クラスメイトの少女は変わらず猫神(ねこがみ)(うで)の中でぐったりしている。
「ん……?……モモキ……?どうしたんだ、モモキっ!青ざめ汗
 会計を終えて(もど)ってきた彼女の義兄(あに)が、顔面を蒼白(そうはく)青ざめにして()けつけてくる。
貧血(ひんけつ)か何かでしょうか。ちょうどオレが通りかかった時に(たお)れかかってきて……」
 猫神が前にも聞いたことのあるような言い(わけ)をしながら少女を義兄(あに)の手に(わた)す。その時、服の(そで)から再びちらりと例のブレスレットが見えた。
(……あれ?あのブレスレット……前見た時と(ちが)う……?黒い部分が()えてるような……)
 少女を義兄(あに)(まか)せ、エデンたちはその場を(はな)れる。人目のない場所を(さが)して階段の(おど)()まで来ると、猫神はおもむろにエエデンを()り返った。
「あの娘から災厄の獣(カラミタス・ビースト)(にお)(うす)れた。だが油断(ゆだん)禁物(きんもつ)だ。エデン、学校であの(むすめ)から目を(はな)すなよ」
「あ……うん。あ、あの……猫神先輩(せんぱい)……汗
 ブレスレットのことを()こうとして、だがエデンは上手(うま)く言葉が出て来なかった。なぜか、そのことに()れてはいけないような予感がしたのだ。
 猫神は言葉につまるエデンを優しい目で見つめ、(かす)かに()みを()かべる。
「早く家へ帰って休め。明日は学校があるんだからな」
「あ……はい。ありがとうございます」
 そのまま()って行こうとし、だが思い直したように立ち止まり、猫神はもう一度エデンを振り返る。
「……急がせるつもりはないし、無理をさせるつもりもないが……お前には強くなってもらわなければ(こま)る」
「え……?」
「技に対するイメージ(りょく)(やしな)い、契約の獣(エンゲージド・ビースト)との(きずな)を深めていけ。……慈恩(じおん)(すく)い出せるとしたら、それはきっと娘であるお前だけだから……」
「パパ……?パパが一体、何……?」
 聞き返そうとした瞬間(しゅんかん)、エデンの脳内(のうない)ピリッビリッと奇妙(きみょう)なイメージが浮かんだ。
 一瞬(いっしゅん)で消え、何なのか(たし)かめることもできなかったそれに、エデンは言いようのない青ざめ恐怖(きょうふ)青ざめ(おぼ)えて立ちすくむ。
(何?今の……。知ってるような……でも、思い出せない。何だか、コワイ……青ざめ
姫君(ひめぎみ)!?汗お顔の色が()(さお)です冷や汗!やはり先ほどご無理をなさったから……。早く休める場所へ移動(いどう)しましょう!汗
 いつの()にか猫神の姿(すがた)はもう見えなくなっていた。心配して(さわ)ぐレトの声をどこか遠くに感じながら、エデンは自分で自分に()いかける。
(そう言えば……パパって、どうしていないんだっけ……?事故(じこ)って、聞いた。でも、事故って何の……それでパパはどうなったんだっけ?私、それをママにちゃんと聞いたっけ……?)
 思い出そうとすると、なぜか暗闇(くらやみ)の中の(そこ)なし(ぬま)に足を()()れているかのような青ざめ恐怖青ざめを感じる。
(こわい……ヤダ。これ以上、考えたくない……。何なの、これ青ざめ。何で私の記憶(きおく)の中に、こんなよく分からない部分があるの……青ざめ?)
 エデンはその青ざめ恐怖(きょうふ)青ざめから身を守ろうとするように、無意識(むいしき)に自分で自分の身体(からだ)()きしめた。
「姫君っ!青ざめ汗
 ふらつくエデンをレトが(ささ)える。そのあたたかい(うで)の中で、エデンは何かから(のが)れようとするようにゆっくりと意識(いしき)手放(てばな)していった。

藤花
 
 
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Episode3−11011121314
 
  このページは津籠 睦月によるラブコメ・ファンタジー小説 「魔法の操獣巫女(マジカル・ビーストテイム・シャーマン)★エデン」の
シンプル・レイアウト(デコレーション・モードLV2)版です。
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シンプル・レイアウト版は用語解説フレーム版より後に制作しているため、ストーリーが若干遅れています。
 
 
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