Episode3:今日 is ideal day for 初デート<12>

〜キョウ ハ、ハツ デート ビヨリ〜

  という(すず)()と同時に、三人と(ビースト)の間に大きな二輪の台車に()せられた古めかしい(かた)大砲(たいほう)(あらわ)れる。猫神が手を()ってもう一度鈴を()らすと、ずどんという轟音(ごうおん)とともに砲弾(ほうだん)が飛び出し、(ビースト)後方(こうほう)へ大きく吹き飛んだ。
「よし!今のうちだ!」
 獣はちょうどスィーツの氷づけが(ころ)がっている(あた)りに落下(らっか)する。その衝撃(しょうげき)で氷づけスィーツは辺り一面に派手(はで)()らばった。
「あの“(ゲート)”をくぐるんだ!(いそ)げ!」
 猫神が方位磁石(ほういじしゃく)方角(ほうがく)(たし)かめながら、巨石(きょせき)と巨石の間のとある一点を指差(ゆびさ)す。
 ストーン・サークルの巨石の向こう(がわ)はほとんどが灰色のモヤに(つつ)まれていて何も見えないが、猫神の()(しめ)した部分だけ、結界(けっかい)に入る前に見たショッピング・モールのフロアの景色(けしき)陽炎(かげろう)のようにゆらめいていた。
「……あれ?(れい)の獣、()って来ないようですが……」
 レトが不思議(ふしぎ)そうに背後(はいご)()(かえ)る。エデンも不思議に思ってそちらへ目を向けると……
「え……?あのコ……私の攻撃(こうげき)……食べ……てる青ざめ冷や汗
 (ビースト)氷づけになったマカロンやマシュマロやマスクメロン鼻先(はなさき)を近づけ、そのままガツガツと(むさぼ)()っているようだった。
 透明(とうめい)な獣の口の辺りで、スィーツが次々に粉砕(ふんさい)され、消滅(しょうめつ)していく。
「アレはお前の“力”を具現化(ぐげんか)したモノだからな。無害化(むがいか)してしまえば(けもの)(かて)にもなる、ということだ。アレを(すべ)()らいつくせば(ふたた)びこちらに向かって来るぞ。……お前の力を取り()んで、さっきより数段(すうだん)パワーアップした状態(じょうたい)な」
「そんな……。じゃあ、私は、本当にあのコにただエサをあげただけ……青ざめ冷や汗
 うつむくエデンの頭を、猫神がぽん(たた)く。
「それが今、足止めになっているのだから結果(けっか)オーライだ。今はその(むすめ)を安全な場所まで(はこ)ぶのが先決(せんけつ)だろう。さっさとここを出るぞ」
 言いながら猫神が(ちゅう)()いた少女の身体(からだ)を自分の(うで)(かか)え上げる。
 その光景(こうけい)にエデンの(むね)一瞬(いっしゅん)チクン、と(いた)んだ。だが、それがなぜなのか、この時のエデンにはまだ()かっていなかった。

藤花
 
 
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Episode3−11011121314
 
  このページは津籠 睦月によるラブコメ・ファンタジー小説 「魔法の操獣巫女(マジカル・ビーストテイム・シャーマン)★エデン」の
シンプル・レイアウト(デコレーション・モードLV2)版です。
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シンプル・レイアウト版は用語解説フレーム版より後に制作しているため、ストーリーが若干遅れています。
 
 
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