〜キョウ ハ、ハツ デート ビヨリ〜
という鈴(すず)の音(ね)と同時に、三人と獣(ビースト)の間に大きな二輪の台車に載(の)せられた古めかしい型(かた)の大砲(たいほう)が現(あらわ)れる。猫神が手を振(ふ)ってもう一度鈴を鳴(な)らすと、という轟音(ごうおん)とともに砲弾(ほうだん)が飛び出し、獣(ビースト)が後方(こうほう)へ大きく吹き飛んだ。 「よし!今のうちだ!」 獣はちょうどスィーツの氷づけが転(ころ)がっている辺(あた)りに落下(らっか)する。その衝撃(しょうげき)で氷づけスィーツは辺り一面に派手(はで)に散(ち)らばった。 「あの“門(ゲート)”をくぐるんだ!急(いそ)げ!」 猫神が方位磁石(ほういじしゃく)で方角(ほうがく)を確(たし)かめながら、巨石(きょせき)と巨石の間のとある一点を指差(ゆびさ)す。 ストーン・サークルの巨石の向こう側(がわ)はほとんどが灰色のモヤに包(つつ)まれていて何も見えないが、猫神の指(さ)し示(しめ)した部分だけ、結界(けっかい)に入る前に見たショッピング・モールのフロアの景色(けしき)がのようにゆらめいていた。 「……あれ?例(れい)の獣、追(お)って来ないようですが……」 レトが不思議(ふしぎ)そうに背後(はいご)を振(ふ)り返(かえ)る。エデンも不思議に思ってそちらへ目を向けると…… 「え……?あのコ……私の攻撃(こうげき)を……食べ……てる?」 獣(ビースト)は氷づけになったマカロンやマシュマロやマスクメロンに鼻先(はなさき)を近づけ、そのままガツガツと貪(むさぼ)り喰(く)っているようだった。 透明(とうめい)な獣の口の辺りで、スィーツが次々に粉砕(ふんさい)され、消滅(しょうめつ)していく。 「アレはお前の“力”を具現化(ぐげんか)したモノだからな。無害化(むがいか)してしまえば獣(けもの)の糧(かて)にもなる、ということだ。アレを全(すべ)て喰(く)らいつくせば再(ふたた)びこちらに向かって来るぞ。……お前の力を取り込(こ)んで、さっきより数段(すうだん)パワーアップした状態(じょうたい)でな」 「そんな……。じゃあ、私は、本当にあのコにただエサをあげただけ……」 うつむくエデンの頭を、猫神がと叩(たた)く。 「それが今、足止めになっているのだから結果(けっか)オーライだ。今はその娘(むすめ)を安全な場所まで運(はこ)ぶのが先決(せんけつ)だろう。さっさとここを出るぞ」 言いながら猫神が宙(ちゅう)に浮(う)いた少女の身体(からだ)を自分の腕(うで)に抱(かか)え上げる。 その光景(こうけい)にエデンの胸(むね)が一瞬(いっしゅん)チクン、と痛(いた)んだ。だが、それがなぜなのか、この時のエデンにはまだ分(わ)かっていなかった。