Episode4:From today on,あなたは My Friend<10>

〜キョウ カラ、アナタ ハ ワタシ ノ ズットモ〜

「一体どういうことなのか、説明してもらおうか」
 猫神が、何とも複雑(フクザツ)そうな顔で(あゆ)()って来る。
 エデンは「えっと……汗と、つまりながら、何とか説明を(こころ)みる。
「戦ってる途中(とちゅう)で『何かヘンだな』って、気づいたんです。このコ……ハスキー、私たちを本気で攻撃してる感じがしなくて……」
「氷の粒を複数回、当てられたはずだが……?」
「でも、その氷の粒も、すっごい弱々で、ほとんどこっちにダメージ無かったじゃないですか。だから、思ったんです。このコ、わざと挑発(ちょうはつ)して、私に魔法を使わせようとしてるだけなんじゃないかって」
「どういうことだ?なぜわざわざ攻撃魔法を使わせたがる?」
 猫神の言葉に、エデンは首を横に()り、手に持った骨付き肉マンガ肉(かか)げてみせる。
(ちが)うんですよ。ハスキーが欲しがってたのは、攻撃魔法じゃなくてそれによって(つく)り出された食べ物の方なんです。だって、ハスキーの仕草(しぐさ)、オヤツが欲しくてワンワン言ってるワンコとそっくりでしたもん」
 エデンがそう言った直後、ハスキーが「その肉をさっさとよこせ」と言いたげに『ワン!』()える。
 エデンは「あぁっ、ゴメンね汗と、あわててハスキーに肉を()し出す。
「……つまりコイツは、前回お前の攻撃を文字通り()らって『味をしめていた』わけか……。お前の魔力を元とした魔法なら、さぞ上質な味がしただろうからな……」
「たぶん、そうなんじゃないかなって思って……だから、お肉を作って交渉(こうしょう)してみたんです。で、上手くいっちゃいました」
 エデンは「テヘ」という感じで()れ笑いするが……猫神の表情は、ますます複雑そうになる。
「……こんな形で契約を成すとは……。まぁ、慈恩の娘らしいと言えばらしい、か……」
 盛大なため息ため息をつき、猫神はハスキーと向き合う。
「では、さっさとこの結界を()いてもらおうか。コイツがクラスメイトを見失う前にな」
 その台詞(セリフ)に、エデンはさっと青ざめる。
「そうだ!私、高梨さんを追いかけてたんだ汗!でも、もう結構(けっこう)、時間が()っちゃってる……冷や汗
「大丈夫だ。結界の中は、外よりもゆっくり時間が流れているからな。結界の外では、まだ1分も経っていないだろう」
「良かったぁー……ため息
 エデンは胸を()で下ろしかけ……すぐに、まだ安心はできないことを思い出す。
(そうだ。追いつけたって、上手く話ができるか、分からない。このまま嫌われちゃう可能性も……冷や汗
 不安で顔を強張(こわば)らせるエデンの肩を、猫神が優しくポンと(たた)く。
「大丈夫だ。お前は口が上手いわけではないが、相手のことをよく見て、その本質や本心を見抜(みぬ)くことができる。コイツの真に欲していたモノに気づけたように、な」
 言って、猫神はハスキーを指差(ゆびさ)す。
「迷いや恐れに(まど)わされずに、ただ、今そこにあるもの目の前にいる相手を見つめ、何をすべきか、言うべきか考えればいい。お前にならできるはずだ。最初は敵だったはずのコイツですら“友達”にできたんだからな」
 エデンはハッとしてハスキーに目をやる。
(そっか。私、もう(すで)に一人、友達を作ってた。一人作れたんだから、二人目がムリってことは、ないよね?)
 エデンは、緊張(きんちょう)に固まっていた心が、ゆっくりとほどけていくのを感じた。
「ありがとうございます、猫神先輩!私、がんばります!」
 そう告げるエデンの瞳に、もう不安の色は無かった。
 そこにはただ『絶対に彼女を友達にしてみせる』という意気込み だけが浮かんでいた。

 
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  このページは津籠 睦月によるラブコメ・ファンタジー小説 「魔法の操獣巫女(マジカル・ビーストテイム・シャーマン)★エデン」の
シンプル・レイアウト(デコレーション・モードLV2)版です。
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シンプル・レイアウト版は用語解説フレーム版より後に制作しているため、ストーリーが若干遅れています。
 
 
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