Episode4:From today on,あなたは My Friend<8>

〜キョウ カラ、アナタ ハ ワタシ ノ ズットモ〜

 猫神は舌打ちし、鈴の音とともにその手に鋼鉄の傘を出現させた。そのまま傘を前へ突き出し、くるくる回して飛んでくる氷の粒を(はじ)き返す。
「エデン!早く次の攻撃を!」
「ハ、ハイっ!汗
 エデンはあわてて猫神の手をつかむ。
(えっと、えっと……食べられたらマズいから……食べられる前に消えちゃうもの!)
 エデンは杖を()り上げ叫ぶ。
バブル・バード・ボム!」
 杖の先からフワッと無数のシャボン玉が飛び出した。それは空中で透明(とうめい)な鳥の姿に変わり、獣の方へと飛んでいく。そして獣の近くまで来ると、シャボン玉が弾けるようにパチンパチンと音を立て、七色の火花を散らした。
『キャイン、キャインッ!』
 獣は小犬のような悲鳴を上げるが……
「えっと……()いてる?」
ちょっとした電気にピリッビリビリピリッしたくらいのダメージしか受けていないようだな。魔法のイメージが弱過ぎたんだ」
「そんなぁ……冷や汗
 シャボンの鳥が全て消えると、獣は怒ったようなうなり声 を上げ、何か文句(もんく)でも行っているようにガウガウと吠えた。
「え……怒ってる……?」
「あんな(ばつ)ゲームのような魔法でおちょくられれば、それは怒りもするだろう」
「わざとじゃないのにぃ……冷や汗
 エデンは泣きそうになりながら次の魔法を考える。
「えっと……フラワー・ファルコン・ファイヤー!」
 杖の先から花びらが吹き出し、ハヤブサの形にまとまって真っ()ぐ獣に向かっていく。そのまま獣に激突し、花火のような色とりどりの炎を燃え上がらせるが……
『ガウガウ……ッ!
「また効いてない……っ汗
「見た目の美しさにこだわるからだ!ビジュアルより威力(いりょく)を重視しろ!」
「えっと……えっと……じゃあ、もう……ファイヤー!」
 もはや“技”としての形にこだわらず、シンプルな“炎”だけをイメージして叫ぶ。
 杖の先数十cmの空中に、ポッと火の玉が表れ、獣に向かい飛んでいくが……
『グワァアァーッ!』
 恐ろしい叫びと共に(はな)たれたブリザードを前に、火の玉は大きく()らめき、(はかな)く消え去ってしまった。
『ワン!ワン!』
 獣の()え声と同時に、小さな氷の粒がパラパラ飛んで来てエデンに当たる。
「痛……っ!汗
「氷に対し火というのは正しいが、規模(きぼ)が小さ過ぎる。もう少し強大な炎を想像しろ」
「そ……そんなこと言われても……汗
 エデンは頭の中で“強い炎”をあれこれイメージしてみる。
(強い炎……大っきい炎……キャンプファイヤーくらいの?……ダメだ、攻撃って言うより楽しげなイメージしか浮かばない……冷や汗
『ワン!ワン!
 イライラしたように獣がまた吠えた。
 再び小さな氷の粒が飛んで来るが、今度は猫神が鋼鉄(こうてつ)(かさ)で全て(はじ)き飛ばす。
 その、パラパラと弾き飛ばされる氷の粒に、エデンはふと違和感(いわかん)(おぼ)えた。
(……あれ?何か、攻撃弱くなってない?獣の見た目は強そうにパワーアップしてるのに、何で……?)
 エデンは氷の粒をまとった透明(とうめい)な獣を、じっと見つめる。
 獣はイラ立ちを(かく)せないように前肢(まえあし)をバタバタさせていた。頭を低くしたり、高くしたりして、落ち着きなくエデンたちの様子をうかがっている。
『ワン、ワン、ワン!
 獣はまたしても氷の粒で攻撃してくる。
 だが、それはエデンたちに何のダメージも与えない。まるで、ただ挑発(ちょうはつ)しているだけのような、ささやかな攻撃だ。
(もしかして……)
 エデンの頭に(ひらめ)くものがあった。それは、かなり突飛(とっぴ)な想像ではあるのだが……

 
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  このページは津籠 睦月によるラブコメ・ファンタジー小説 「魔法の操獣巫女(マジカル・ビーストテイム・シャーマン)★エデン」の
シンプル・レイアウト(デコレーション・モードLV2)版です。
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シンプル・レイアウト版は用語解説フレーム版より後に制作しているため、ストーリーが若干遅れています。
 
 
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