幼い少女→大人一歩手前の少女へ【四年の空白(ブランク)】   
前章からこの章までの間には物語上、四年間の空白期間が流れています。
 
たとえばこの物語がシリーズ物の長編連作であったなら、前章までで1話目が終わり、続く四年間の旅も数話分の物語になったのでしょうが、この物語はあくまでも一話完結の物語ですので、間をすっ飛ばして終局へと話は流れていきます。
それでも出会いと旅立ちから一気に終局へと飛んでいかずに物語上の空白期間を開けたのは、ふたりきり(正確に言えば一人と一柱ですが)の旅の時間を少しでも長く続けさせてあげたいという作者心(おやごころ)からでした。
 
と言うわけで、序章からもうっすらと語られてはいますが、今後の展開はとてもシビアです。
とは言え、決して悲しいだけの物語で終わらせるつもりはありませんので、最後までおつき合いいただけるなら有り難いです。
 
ちなみに空白の四年の間のエピソードも、機会があるなら外伝的な短編として描くかも知れません(需要があるかどうかは分かりませんが…ネコ絵文字一覧はこちらをクリック)。
  
甲斐の国峡国(かいのくに)】   
モデルは『甲斐(かい)の国』、つまり現在の山梨県です。
枕詞的な『山深き』はオリジナルで、「山梨と言えば山!」というごくごく単純な発想から来ています。
 
『山神の加護篤き国』という辺りは作者のオリジナル設定です。
「山の神が棲むとしたら、日本の中でどこだろう」と考えた時に、「やっぱり富士山周辺かな」と思ったので、この辺りは山神の霊力の影響下にあるということになっています。
 
ちなみに漢字は作者の趣味でこの字にしていますが、『峡(峽)』は『山』に『(はさ)む』で、山と山の間の谷などを表す漢字です。
  
富士の山【不尽の山】   
漢字の読みから既にお分かりかと思いますが、モデルは富士山です。
 
二つとない『不二の山』や、死なない山『不死の山』など、『ふじのやま』を表す漢字は古来からいろいろあるのですが、この物語では作者の独断と趣味によりこの漢字を選択しています。
 
木の花咲くや【コノハナサクヤヒメ】   
日本神話の中ではわりと有名どころの女神様で、天皇家のご先祖様のうちの一柱でもあります。
 
花の命が短いことになぞらえて、美と短命の象徴として描かれ、古事記や日本書紀の中では、醜さと永遠の命を司る姉のイワナガヒメとともに天皇家の祖先の元に嫁ぎますが、彼が美しいコノハナサクヤヒメだけを妻にし、姉のイワナガヒメを帰してしまったことにより、人間に寿命が生まれたとされています。
 
また、富士山をご神体とする浅間神社(せんげんじんじゃ)の祭神であり、物語中の『不尽の山にコノハナサクヤヒメがいる』という記述はこのことが元になっています。
 
pink cloth【淡い桃花染(つきそめ)の衣】   
四年の空白期間を経て、花夜の衣裳もマイナーチェンジしています。
 
ちなみにこの『桃花染の衣』は万葉集の歌の一つ
「桃花染の浅らの衣浅らかに思ひて妹に逢はむものかも」からとっています。 
いろいろとマニアックですみません…ネコ絵文字一覧はこちらをクリック
 
五刑【古代の刑罰】   
古代の刑罰は軽い方から順に「()」「(じょう)」「()」「()」「()」の五刑です。
 
笞と杖は両方とも(むち)打ちで、罪の重さによって打たれる回数が変わってきます。
徒は現在の懲役(ちょうえき)刑にあたり、罪の重さにより1年〜3年の労働を課せられます。
あとは字からもお分かりでしょうが、流は流刑、死は死刑となります。
 
旅人を襲う賊ともなれば、その罪は相当に重いものでしょうから、罪は罪として憎みつつも、彼らの今後に想像をめぐらせ、(あわ)れみの情を覚えている、というのがこの時の花夜の心情なのです。
  
 
 ※このページは津籠(つごもり) 睦月(むつき)によるオリジナル・ファンタジー小説花咲く夜に君の名を呼ぶ(古代ファンタジー小説)
  ストーリーや用語に関する豆知識やこぼれ話・制作秘話などを蛇足に解説したものです。
  解説の内容につきましては資料等を参考にしてはいますが、諸説あるものもございますし、
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倭ファンタジー知識解説へびさんのあんよ
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