【天の羽衣】 |
物語中に登場する鳥神の巫女の装束『天の羽衣』はオリジナル設定ですが、着想の元は漢字を見ていただけばお分かりの通り『天の羽衣』です。
オリジナルの『天の羽衣』は天女の衣ですので空を飛ぶことができますが、物語中の『天の羽衣』には空を飛ぶ機能はありません。
また、袖が鳥の翼を模した形の装束というものも、完全に作者の想像によるものです。ひだ付きのスカート状のもの(=裳)が作れるのだから、同じ技術を袖に応用することもできるだろうという単純な想像の元にイメージしています。
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【鳥羽の過去と天女伝説】 |
第4章後編では鳥羽の過去について語られていますが、この過去のエピソードは日本各地に残る天女伝説(最も有名なものが天の羽衣伝説)、中でも特に沖縄(琉球)地方に伝わる『天人女房譚』をモチーフにしています。
この『天人女房譚』は島によって細かい部分は異なっているものの、大まかな部分はだいたい同じで、『水浴びしている天女の衣を男が隠す』→『天女は男の妻となり、子どもが生まれる』→『天女が子どものおかげで衣のありかを知る』→『衣を見つけた天女が天へ帰る(子どもも一緒に連れていかれるというパターンもあるようです)』そして『衣の隠し場所は高倉の稲束の中』というものです。
物語の中では、記憶喪失などのアレンジを加え換骨奪胎してはいますが、作者が何となく鳥羽に天女のイメージを重ねて描いていることもあり、鳥羽の過去についてはかなり意図的に『天人女房譚』のモチーフを組み込んでエピソードを作っています。
<参考文献『巫女の文化』> |
【水鳥多集く羽真那国】 |
作者によるオリジナル設定の架空の国です。
モデルとなっている地域は現在の静岡県浜名湖周辺です。
静岡の古い地名と言えば『駿河』や『遠江』があるのですが、あまり大きくない国にしたいという思いから、旧国名ではなく湖の名から取らせていただきました。
鳥神が守護する国ということで、国名にも鳥を絡ませていますが、浜名湖は現在でもアオサギなどの水鳥が多く集まる湖らしいです。(←ネット情報)
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【偽りの名=花名女】 |
古代の戸籍などを見ると、古代の女性名で『○○め』という名前はかなりポピュラーであったようです。
正倉院文書の中の豊前国仲津郡丁里の戸籍などにも『竜売』『宇提売』『飯手売』『虫名売』などの名前が見られます。
ただしご覧の通り、『め』は『女』の字ではなく『売』という字が当てられていました。
(この物語の中では分かりやすく『女』の字を当てています。)
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【鳥羽の霊力】 |
現在、五鈴鏡に取り憑いているような状態の鳥羽ですが、普段は鏡の中で待機していて、滅多に外へ出てくることはありません。
物語上の設定ですが、死んで魂だけの存在になってしまっている鳥羽の霊力は有限であり、霊力を使えば使うほどその残量は少なくなっていくのです。そして霊力が尽きた時点で、もはやこの世に留まることはできなくなってしまいます。
ということで、鳥羽も霊力の省エネに努めていますし、花夜もまた母の霊に無理をさせないよう、よほどのことが無い限りは母に助けを求めないようにしているのです。
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