禁じられた紅【紅の八入】   
(くれない)八入(やしお)』は『紅の八塩』とも書きますが、『八入』の字の方が意味が分かりやすいかと思い、物語中ではこちらの字を採用しています。
  
『八入』は『入れる』という字が表わす通り、染液に(ひた)し入れる回数を表わすものであり、『八』は『数えきれないほどたくさん』を意味します。
これだけでも大変に手間(てま)のかかる色だというのが分かるかと思いますが、それ以上に、使用する紅花の量が半端(はんぱ)ではなく、絹一疋(いっぴき)二反(にたん))を染めるのに約12sもの紅花が必要だったということです。
当然ながら費用も相当にかかり、財の浪費を防ぐため、『紅の八入』は一部の限られた人間以外身につけてはならない『禁色(きんじき)』とされていました。
 
ちなみにこの物語の世界では『禁色』という制度自体が無いため、身分を問わずこの色を身につけることができますが、やはり経済的な理由から、この色の衣服を身につけられるのは相当な財を持つ者に限られています。
<参考文献『色の名前で読み解く日本史』> 
古代キラキラネーム【雲箇の名の由来】   
雲箇(うるか)』は古代の地名から取っています。(『播磨国風土記』の宍粟郡に雲箇里という記述があります。)
その地名の由来は、その地を訪れたコノハナサクヤヒメの姿が『うるわしかった』からだと言われています。
(※地名の語源について書かれた本などを見ると『潤(うる)』に『処(か)』で『湿地』を表している等、別の説が載っているものもあります。)
 
ヒロインと対立する立場であり、敵方の巫女であるわけですが、それゆえに()えてこういうきらきらしい名前を付けています。
 
ちなみに登場人物のネーミングは、その人物の所属する国と漢字のイメージをおそろいにして付けているのですが(()蘇利の()夜という風に)、雲箇は
[霧狭司=水神の国→水属性→雨かんむり→雲]
ということで『雲』の字が付いています。
さし』の『』が『霧』なのも同じ理由で雨かんむりを使いたかったからです。(『むし』の『』は[武蔵国=だいたい東京+埼玉の辺り→埼玉の特産品=狭山茶→『山』の『』]というイメージで付けています)
 
士族ではありません【氏族】   
『氏族』は、『同じ祖先を持つ一族』を意味しますが、この物語の中ではさらに特別な意味を持たせ、国内でも相当な権力を持つ有力な一族、『豪族』が進化したものというようなイメージで使っています。
 
SZK21【二十一氏族】   
霧狭司国内の有力な一族である氏族が21もあるのは、霧狭司のモデルとなっている武蔵国が実際に21の郡に分かれていたことに由来します。
霧狭司にはその実際の武蔵国の21の郡をもじった(漢字だけ変えた)21の郡が存在し、その土地を支配する有力な一族にその郡と同じ名を付けています。
 
ちなみに葦立(あだち)は『足立』から取っています。(※東京都足立区および埼玉県北足立郡の皆様、敵方の一族ですが、他意はありませんのでお気を悪くしないでください
 
武蔵国の21の郡はわりと今現在も同じ地名が残っているものが多く、面白いです。(ただし『新座(にいくら)郡』が『新座(にいざ)市』など読みが変わっているものもあるようですが(※武蔵国時代の地図と現在の地図を重ね合わせた図を持っていないので、どの郡がどの地になったかというのは地名とだいたいの場所からの推測です))
  
いわゆる一つのGood Luck【幸く有れ】   
おそらく、この物語の最重要キーワードの一つだと思います。
 
この言葉を作者が初めて知ったのは、国語の授業中だったと記憶しているのですが(※うろ覚え)、これは万葉集の歌の一つに出てくる言葉です。
その歌は『父母が(かしら)かき()()()れていひし言葉(けとば)ぜ忘れかねつる(「父さんと母さんが頭を()でて『幸く在れ』って言ってくれた言葉が、今でも忘れられないんだ」というような意味です)』というもので、東国から西国(九州)へ防人(さきもり)の任に()くため旅立つ子に両親が言葉を()けるという情景を歌ったものです。
今のような交通網など無かった昔、下手をすると今生(こんじょう)の別れになるかも知れない親子の別れの場面であり、とても切ない歌として作者の脳裏に刻まれたのですが、その記憶が時を()て物語の一部へと変化しました。
 
と言うより実は、この「花咲く…」の物語、ストーリーの主軸が作者の学生時代の国語の教科書からの着想(アイディア)になっています。
他にどんな部分が着想の元になっているかというのは、ネタバレになってしまうのでまだ書けませんが…。
主軸部分以外にも、設定面などで歴史の教科書、参考書(用語集)、中学時代の日本地図帳など、学生時代の教科書をフル活用して書いています。
 
 
※このページは津籠(つごもり) 睦月(むつき)によるオリジナル・ファンタジー小説花咲く夜に君の名を呼ぶ(古代ファンタジー小説)
  ストーリーや用語に関する豆知識やこぼれ話・制作秘話などを蛇足に解説したものです。
  解説の内容につきましては資料等を参考にしてはいますが、諸説あるものもございますし、
  管理人(←歴史の専門家ではありませんので)の理解・知識が不充分である可能性もありますのでご注意ください。
ファンタジー小説解説へびさんのあんよ
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