【実はたくさんいる水属性の神々】
 
本文中で古墳の石室の中に現れた『水に関わる神々』は、風土記や古事記・日本書紀などに登場する水に関係する神々をモデルに描いていますが、実は日本神話の中で「水神」というのは「ミヅハノメノカミ」だけではなく他にもたくさんいるのです。
 
各地方に祀られる土着的な「水神様」や、水に関係していても「水そのもの」ではなく「水に関するある役割」を受け持っている神様、その他にも名前からして水属性の神様らしいけれど何の役割を持つ神様なのか分からない神様など、数え上げればきりがないほどにいるのです。
 
「花咲く夜に君の名を呼ぶ」の物語中では便宜上、そんなゴチャゴチャとたくさんいる水系の神様の中でもその頂点に立つ、いわば「水属性の最高位神」として「ミヅハノメノカミ」を設定しています。
 
それは「ミヅハノメノカミ」がイザナギ・イザナミから生まれた最初にして最古の「水神」であること(河川や海を司る「水戸(ミナト)の神」というのは先に生まれていますが、純粋に「水そのもの」を司っているのはおそらく「ミヅハノメノカミ」が最初かと思われるので)が理由なのですが、実際に(日本神話・日本神道の中で)水属性の神々の力関係(序列など)がどうなっているのか(そもそも序列がつけられるのかどうかなど)はよく分かりません。
  
【天水分神・地水分神】 
 
天水分神と地水分神は水戸(ミナト)の神であるハヤアキツヒコとハヤアキツヒメを父母として生まれた神で、イザナギ・イザナミの孫に当たります。
 
ハヤアキツヒコ・ハヤアキツヒメの間に生まれた子神たちは皆、海と河とを分担して司っていると記述されているのですが、この兄弟神は「水分(ミクマリ)」の名から、水の配分という役割をそれぞれ天と地と分担して受け持っていると思われます。
(それがどういう風に分配されるのか、河川や海とどう関係するのか詳しくは記述されていないのです。)
 
つまり、本文用語解説フレーム内に表示される解説文の「その年に降る雨の総量から各国への水の配分を決める」だとか「河川の流れにより各地に水を運ぶ」といった記述は作者のオリジナル部分で「たぶんこの神様の仕事ってこんな感じなんじゃないかな?」というアバウトな想像により書いています。
(作者はこんな感じで、詳しい記述のほとんどない神の役割を、名前などから想像してみるのが結構好きなのです。)
  
【太水神】 
 
太水神は「播磨国風土記(はりまのくにふどき)」賀毛郡・雲潤(うるみ)の里の地名起源説話に登場する水の神です。
 
丹津日子神(ニツヒコノカミ)という神がこの地に農業用水を引こうとしたところ、この太水神が「(しし)(=猪や鹿)の血で田を作っているので河の水は要らない」と言い断ったというエピソードがあり、そこで丹津日子神が言った「太水神は河を掘ることを『()みて』(=嫌って)こんなことを言ったのだ」の『倦み』が「雲彌(うみ)」になり、後に「雲潤(うるみ)」になったと語られています。
  
【花浪神】 
 
花浪神は「播磨国風土記」に登場する神です。
 
元は近江の国の水神だったのが、播磨国・託賀郡の山にやって来て鎮座したため、この山が「花波山」という名になったと伝えられています。
 
播磨国風土記・賀毛郡では、この神の妻「淡海(オウミ)の神」が近江の国から夫を追ってやって来たが、追いつけなかったためか、恨み怒って腹を割いて沼に沈んだために、この沼を「腹辟の沼」と名付け、この沼の鮒等には五臓がないのだという、ちょっと恐ろしいエピソードが語られています。
 
【御井神】 
 
御井神は聖なる井戸を司る神と言われていますが、実は両親が有名が神々だったりします。 
 
まず、父親がオオクニヌシノカミつまり大黒様、そして母親はイナバノクニのヤガミヒメなのですが、このヤガミヒメはイナバの白兎伝説にも出て来ます。
(オオクニヌシを含めた八十あまりの神々がヤガミヒメに求婚したが、白兎に意地悪をした他の神々は選ばれず、白兎を助けたオオクニヌシが求婚を受け入れられたという伝説です。)
 
その後、母であるヤガミヒメは正妃・スセリビメ(=スサノヲの娘。ネノカタスクニでオオクニヌシと出会い、惹かれ合った)の嫉妬を恐れ、生まれた御井神を木の俣に置いて(古事記の記述では「刺し挟んで」)イナバノクニへ帰ってしまったため、『木俣神(キマタノカミ)』という別名も持っています。
 
【大水主尊】
 
「オミヅヌノミコト」は「出雲国風土記」や「古事記」に登場する、スサノヲの子孫でオオクニヌシの祖父に当たる出雲の神です。
 
国が小さかったため、海の彼方から余っている土地を綱で引き寄せ、縫い合わせて島根半島を創ったという『国引き神話』で知られています。
 
「大水主尊」の漢字表記は当て字のようなもので、風土記や古事記などでは「意美豆努命」「淤美豆努神」「八束水臣津野命」などと表記されています。
  
 
 
※このページは津籠(つごもり) 睦月(むつき)によるオリジナル・ファンタジー小説花咲く夜に君の名を呼ぶ(古代ファンタジー小説)
  ストーリーや用語に関する豆知識やこぼれ話・制作秘話などを蛇足に解説したものです。
  解説の内容につきましては資料等を参考にしてはいますが、諸説あるものもございますし、
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ファンタジー小説解説へびさんのあんよ
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