大宮のひかわ霊河(ひかわ)の宮処】   
モデルはたいたい埼玉県のさいたま市のあたりです。
 
この物語が鎮守神というものにかなり重きを置いた祭政一致の世界観であるので、自然と武蔵国最大の神社のあった場所が宮処として設定されたわけですが、実際の武蔵国の国府は多摩(たま)郡にあったというのが一般的な説のようです。(さいたま市の辺りにあったという説もあります)
 
ちなみに現在の埼玉県さいたま市は武蔵国で言うと足立(あだち)郡の中にあることになります。
物語の中で葦立(あだち)氏が重要なポジションを占めているのにはこういった事情も関係しているのです。
 
大宮のひかわ霊河(ひかわ)の大宮】   
モデルは埼玉県さいたま市大宮駅近くの氷川(ひかわ)神社です。
 
『氷川神社』という名の神社は東京・埼玉近辺に数多く存在するのですが、この大宮の氷川神社はそのたくさんの氷川神社の総本社であり、かつては武蔵国一の宮(武蔵国で一番の神社という意味です)と言われていました。
大宮という地名もこの氷川神社に由来するそうで、現在も埼玉県内有数のパワースポットとして人気のようです。
 
ちなみに実際の氷川神社の祭神はミヅハノメノカミではなく、スサノヲノミコト、イナダヒメ(クシナダヒメ)ノミコト、オオナムチノミコト(別名・オオクニヌシノミコト)です。
 
意外に進んでいた古代の都【古代の都】   
物語中に出てくる霧狭司国の宮処の描写は、日本の古代の都(平城京や藤原京など)の様子を参考に描いています。
 
たとえば物語中に登場する大路(宮処の中心を貫く道路)は平城京の朱雀大路をモデルにしているのですが、この道路は両脇に側溝が掘られていただけではなく、道の中央が盛り上がったカマボコ型をしていて、雨水が自然と側溝へ流れ込む仕組みになっていたようです。
ちなみに石で舗装されていたというのは平城京の遺構からは確認されていませんが、日本各地に残る古代の道路の遺構にバラス(=バラスト。道路や線路などに敷く砂利や砕石のこと)で舗装されたものが存在するため、平城京の大路も舗装されていたのでは…と推測されているのです。
 
他に、市の開門が正午だった、などの記述が物語中に出て来ますが、古代の都で時刻を測るには水時計が使われていました。
この水時計は計算上はかなり正確に時を測れるものでしたが、実際には給水を的確に行わないと性能に大きく影響するため、正確に時が測れるかどうかはその水時計を管理する人間次第だったようです。
ちなみにこの水時計の管理は、8世紀以降は陰陽(おんみょう)寮が担当していました。
 
瑠璃なのに瑠璃色じゃないのもある【るり】   
この物語の中ではガラスとしての『るり』をラピスラズリなどの『るり』と区別しやすくするため、漢字を『琉璃』に統一して使っています。
しかし実際にはそのような区別はなく、『瑠璃』という漢字もガラスを表す言葉として普通に使われています。
(正倉院宝物の白瑠璃碗(はくるりわん)瑠璃杯(るりのつき)など、日本史資料の中で目にした方も結構いらっしゃるのではないでしょうか)
 
日本史のテストなどではむしろ『瑠璃』の方が使用頻度が高いと思いますので、学生の皆様は漢字の書き間違いなどご注意ください
 
ヒの河の姫【ヒカワヒメ】  
『ヒカワヒメ(日河比売(ヒカハヒメ))』は古事記などにも出てくる女神ですが、漢字表記やどういう女神なのかなど、かなりアレンジしています。
 
日本神話の中の『ヒカワヒメ』は水を司る神『オカミ(淤迦美)』の娘で、スサノヲの孫と結ばれ、オオクニヌシノミコト(=後に七福神の大黒様になった神様。イナバの白兎伝説でウサギを助けた神様でもあります)の祖先となっています。
 
神としての性質については、肥の河に関わる女神であるとか、霊の河に奉仕する巫女神であるなど資料により様々です。
 
サラリーマンですらない戦士たち【兵士】  
古代の都において、罪人を逮捕・護送するなどの警察機能は各国の軍団に所属する兵士が担っていました。
 
その「兵士」は兵役で地方から集められた農民などでしたが、彼らは軍団には所属したものの、仕事に必要な武器、さらに日々の食事でさえ自腹でまかなわねばならないという過酷な生活を送っていました。
 
みぬま水沼原(みぬまがはら)】   
水沼原のネーミングの由来は埼玉県さいたま市内の地名『見沼(みぬま)』から来ています。
さいたま市内は結構水に関係する地名が多いので作者的にはすごく助かっています。
(まぁ、そもそも、だからこの辺りを水の国にしたわけなのですが)
  
21+1【二十()氏族】   
氏族の数が物語前半の時から一つ増えているのは、例の国(正確には元・国)が新たな氏族として正式に加わったためです。
 
氏族に加わったことにより例の(元)国もある程度の自治権を持つことはできたのでしょうが、霧狭司国は内輪でも何かとキナ臭い国ですので、今後も氏族としての立場を維持して生き残っていくのは何かと大変かも知れません。
  
魔を射る一族…的な【射魔氏】   
ネーミングは武蔵国の入間(いるま)郡から来ています。
入間郡は足立(あだち)郡に隣接する郡で、結構広い面積を持っていた郡であり、かつては南に隣接する多摩(たま)郡とともに(狭い意味での)武蔵野(むさしの)と呼ばれていた地域です。(広い意味での武蔵野は武蔵国全体)
 
ちなみに射魔氏(及びその血縁者)の名前は、(葦立氏が雨かんむりなのに対し)さんずい縛りとなっています。
  
舟や水の行き着く果て【泊瀬】   
泊瀬(はつせ)』の『はつ(()つ)』は舟などが停泊すること、港にとまることを言い、『瀬』は川や海の浅くなっている所、浅瀬を意味します。
 
ちなみに『ハツセ』という音を持つ皇族は古事記などにも何人か登場しますが、この物語の中の泊瀬とは全く関係ありません。(キャラクターを設定する上でも全く影響していません)
 
むしろ、泊瀬という名の源は『隠国(こもりくの)の泊瀬』という古代の地名から来ています。
(まぁ、特に意味は無く(…もないですが、少なくともこの物語中で語られることはないと思うので)、単に言葉の響きがカッコイイということで(あとさんずいが付いているということで)選んだ名前なのですが…
  
 
※このページは津籠(つごもり) 睦月(むつき)によるオリジナル・ファンタジー小説花咲く夜に君の名を呼ぶ(古代ファンタジー小説)
  ストーリーや用語に関する豆知識やこぼれ話・制作秘話などを蛇足に解説したものです。
  解説の内容につきましては資料等を参考にしてはいますが、諸説あるものもございますし、
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ファンタジー小説解説へびさんのあんよ
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